ただいま歌舞伎座で上演中の三月大歌舞伎!
夜の部「引窓」のざっくりとしたあらすじをお話しています。
今日は後編ですのでどうぞお付き合いください(人'v`*)
前編はこちら…
ざっくりとしたあらすじ 後編
人を殺してしまった濡髪はお尋ね者となり、与兵衛はその詮議を任されていました。
それを聞きつけた奥さんのお早さんは、その仕事はよしたらどうなのと与兵衛に言ってみます。
初めての仕事で手柄を立てることがお母さんへの孝行なんだ、と考える与兵衛に対し
濡髪を捕まえるのはお母さんへの不孝です、と考えているお早。
与兵衛はまだ濡髪が兄とは知らないわけですが、なかなか難しい展開になりました(>_<)
そこへ お幸さんもやってきて濡髪の人相書きを見せてくれと頼みます。
…そんなやりとりの中で与兵衛は、ちらりと目をやった手水鉢の水面に二階にいる濡髪が映ったのを見てしまいました!
与兵衛が(ハッ!二階に誰かいる!あの殺人犯じゃないのか!)と内心ギョッとするのもつかの間、サッと身を隠す濡髪。
お早は機転もので、天井の明かり取りである引窓の紐を咄嗟に引いて部屋を暗くし、水面の反射を消してしまいます。
むむっ、もしやあいつはうちに匿われているんじゃないか…?と与兵衛は勘づきました。
大道具のしかけをうまく使うことで見ごたえあるサスペンスになっていますね(n´v`n)
与兵衛が頼まれたお尋ね者探しの仕事の割り振りは、昼夜交代制。
昼間が二人の侍の担当で、夜が与兵衛の担当なのです。
夜になれば与兵衛は二階に潜んでいるお尋ね者を捕らえなければなりません。。
とそこへ、お幸が「その人相書きを売ってほしいの」と与兵衛に頼んできました。
お幸さんはこれまで、コツコツとお金を貯めてきました。これは亡くなった後に地獄に落ちないよう、永代経を読んでもらうための大切な大切なお金であります。
「死後の世界で奈落の底へ沈むとしても、どうにか息子を救いたい今の思いには代えられない」
現代人の私たちにもよくわかる、子を思う親の心です…より信心深かったであろう昔の人にとって、この決心がどれほどのことかを思うと泣けてきます。゚゚(´□`。)°゚。
そのようすを見て、あぁお母さんの本当の息子はあの濡髪長五郎だったんだ…と与兵衛は察します。お幸さんは継子の与兵衛にとっても大切なお母さんでしたが、やはり実の子が大切なようす。。
親子なのに水臭いなぁお母さん、ハハ…と与兵衛の哀愁が漂います。
殺人犯である濡髪を逃がせば、与兵衛の罪にもなってしまうような大ごとです。
それでも与兵衛は迷わず「どうぞ売りましょう!」と人相書きを差し出してしまいます。
立派に出世はしたけれど、刀を取っちゃえば僕なんて町人の身なんだもの。逃げるなら、こっちが抜け道ですよ!
と濡髪にそれとなく教えてあげる、とても気持ちの良い人なのでした。
ありがとうありがとう。゚゚(´□`。)°゚。と与兵衛のやさしさに感謝するお幸。
そこへ濡髪が現れて「どうか捕まえてほしいでごんす」と自ら申し出るのですが、お幸は「与兵衛とお早夫婦の気持ちを無駄にすることなく逃げてほしい」と諭します。
申し訳ないあまり死にたいくらいの濡髪でしたが、どうにかこうにか逃げることにしました。
逃げるためには人相書きと違う顔にしなければなりませんが、おすもうさんのシンボルである髪型はすぐに変えられるものの顔のほくろはごまかせませんヽ(´o`;
そんなようすを見て与兵衛は、お金を顔めがけてポーンと投げつけて、見事にほくろを削ぎ取ってあげます。
ここへ来て漫画のような驚きの展開ですね(*´艸`)
そんなやさしい与兵衛に感じ入って「やっぱり与兵衛さんのためにも捕まりたいでごんす…実の子ばかり贔屓してよいのでしょうか(;_;)」と申し出る濡髪の言葉を聞き、
実の息子を大事にするあまり義理の息子をないがしろにしてしまった我が身を恥じたお幸は、引窓から下がっている縄で濡髪を縛りました。
与兵衛が縄を切ると、スーッと引窓が開いて月明かりが差し込んできました…
そんな様子を見た与兵衛が「今何時?」とお早に尋ねると「夜中ですよ」と答えが返ってきます。
「いやこれは夜明けの光、僕の任務は夜のうちだけです。ちょうど放生会ですから、どうぞ逃げてください(´▽`)」と言う与兵衛。
あまりのことに深く感謝をした濡髪は、無事逃げてゆきます。
与兵衛たちは濡髪を「さらばさらば」と見送りました。。
と、ここで「引窓」は幕であります(人'v`*)
あぁ、与兵衛ってなんてかっこいいのでしょうか…!あまりのイケメンぶり、とても爽やかです。゚゚(´□`。)°゚。
お芝居のさむらいといえば大望や忠義が第一であり、大切な子供を殺したり奥さんに辛い思いをさせたりしてでもそれを果たそうとします。それこそが武士だ、という姿を見せる芝居もたくさんありますよね。
しかし自分の出世よりお母さんの気持ちを第一に考えてあげる与兵衛は、さむらいの出で立ちでも町人の心を持った人なのですね。
内容がわかると親しみやすい、あたたかみある演目でした(´▽`)