歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい双蝶々曲輪日記『引窓』 その三 簡単なあらすじ 前編

ただいま歌舞伎座で上演中の三月大歌舞伎

夜の部「引窓」についてお話してまいりました!

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ごく簡単にあらすじをお話したいと思いますので、なんらかのお役に立てればうれしく思います(人'v`*)

ざっくりとしたあらすじ

舞台は田舎の民家です。

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これは南与兵衛という男のおうちで、奥さんのお早と母のお幸さんがその帰りを待っています。翌日には放生会(ほうじょうえ)という行事があるので、二人はその支度をしています。

放生会というのは捕まえた生き物を逃がしてあげることで、殺生を戒めようという儀式です。

南与兵衛は「みなみよへえ」ではなく「なんよへえ」と読みますのでご注意くださいね(人'v`*)

 

このたび南与兵衛は亡くなったお父さんが勤めていた郷代官という役職を継ぐこととなり、南方十次兵衛という立派な名前に改めました。立派な衣服と、立派な刀を拝領してうれしい与兵衛です。

もともと八幡の町人で笛売りでしたから、郷代官を継ぐというのは与兵衛にとって出世も出世、大出世なのですヽ(。>▽<。)ノ

そのうえ、いきなりお尋ね者の詮議という大きな仕事を引き受けることになります。

前職よりも待遇が良く社会的地位も高い仕事に転職できたばかりで、一大プロジェクトを任されたんだと我が身に置き換えて想像すると…まさに、今張り切らなくてどうするという大事な大事なタイミングであります。

与兵衛にとって人生のチャンスの時がやってきた、そんなことを念頭に置いてご覧になってみてください。

 

そういったわけで代官所に行っている主人の与兵衛が不在のおうちに、おすもうさんの濡髪長五郎がやってきました。

実はこの濡髪長五郎お幸の実の息子だったのですΣ('0'o)

濡髪は小さいころ大坂に養子に出されて大きくたくましく育ち、やがて大人気のおすもうさんとなりました。

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一方で、小さな我が子を手放さなければならなかったお幸さんは、与兵衛のお父さんの後妻になっていたのです。複雑な家庭事情があったのですね…(/_;)

 

そんな濡髪お幸さん親子は昨年偶然再会を果たしていたのですが、継子の与兵衛にはまだ濡髪を紹介できていません。

ちょうどよかったわ、兄弟の盃を交わしたらいいじゃない、と考えるお幸さんでしたが、濡髪はなんだかしょんぼりとしているようす(。´_`。)

 

実は濡髪、大事な御贔屓の若旦那である山崎屋与五郎さんを助けてあげたい一心で、大変な罪を犯してしまっていたのです。

(与五郎さんと濡髪のお話はこちらをお読みください)

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与五郎さんは恋人の遊女・吾妻の身請けをめぐって、西国武士とライバル関係にありました。濡髪は「どうか与五郎さんに譲ってあげてはくれませんか」と西国武士に頼みましたがこれを断られ、斬り合いとなった結果…

はずみに西国武士たちを殺してしまったのです(・_・;)

 

濡髪が殺意を持った悪人だったわけではありません。この時代のおすもうさんにとって御贔屓というのはとにかく恩ある方であり、絶対的な忠義の心を持つ相手だったといいます。

それでも人を殺してしまうのはやはり罪。逃亡のさなか一目お母さんに会ってお別れを言いたいと思い、やって来たのでした。゚゚(´□`。)°゚。

 

そんなこととは知らぬお幸さんはひとまず濡髪を二階へ案内することに。

そこへ南方十字兵衛となった南与兵衛が、意気揚々と帰ってきました。すっかり立派なおさむらいですが、名前が変わるとわかりにくいのでここでは南与兵衛(与兵衛)という呼び名で通したいと思います。

与兵衛はうれしくてうれしくて仕方がないようす。二階に殺人犯がいるとも知らず、お早お幸に出世の喜びを話して聞かせています(´▽`)

 

与兵衛は二人のさむらいを家に連れてきていました。なんでも、この二人の兄弟が大坂で殺されてしまったのだそう。

しかも「犯人は濡髪長五郎だ」と言って、夜の間に詮議してほしいと人相書きを託していったのです…(・_・;)

転職したての与兵衛が最初に任されたプロジェクトが「濡髪をひっ捕らえる」ということ。

 

この話を聞いていたお早お幸もびっくり仰天。大変なことになりましたね…

出世を喜ぶ与兵衛は、二階の濡髪に気づいてしまうのでしょうか?

後編に続きます!

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