一月はたくさんの劇場で歌舞伎が上演されていましたね!
毎年一年の初めは劇場がとてもにぎにぎしく、幸せな気持ちになります。
歌舞伎座の壽初春大歌舞伎で上演された「勧進帳」と
浅草公会堂の新春浅草歌舞伎で上演された「義経千本桜 鳥居前」にちなみ、
歌舞伎の演出用語をひとつお話したいと思います。
簡単なご紹介ですが、なんらかのお役に立てればうれしく思います!
歌舞伎といえばやっぱりあの動き
歌舞伎屈指の名作「勧進帳」の幕切れ…
弁慶が手足を大きく動かしながら、
花道をトントントンと力強く飛びながら引っ込んでいくようすは
歌舞伎をご覧になったことがない方にも有名ですよね!
これは六方(法)(ろっぽう)と呼ばれる歌舞伎ならではの演出のひとつ!
手を大きく振りながら足を踏みしめる、様式的な芸であります。
ルーツについては諸説ありますが、
古くから日本に伝わる祭礼行事や儀式などで用いられていた動きを取り入れたものではと言われており、
「六方の儀」という鎮めの儀式にのっとって天・地・東・西・南・北の
いわゆる六方に手を動かすことを意味しているようです。
右手を出すときは右足から、
左手を出すときは左足から…と手と同じ側の足を出します。
ヒーローが!渾身の力で!歩くぞ!!!走るぞ!!!!!という
なにやらものすごく大げさで華々しく、いかにも歌舞伎らしい演出です!
「勧進帳」の弁慶は飛び六方
そんな六方の演出のなかでも、
飛び跳ねるように勇んでいく弁慶の六方は「飛び六方」と呼ばれます。
片手を大きく振って勢いよく足を踏み鳴らすことで、
勇ましく力いっぱい駆けていく様子をあらわしています。
「鳥居前」の源九郎狐は狐六方
一方で「義経千本桜 鳥居前」の源九郎狐の引っ込みには、
手を握って手首をしならせる「狐手」の仕草をしながら六方を踏む
「狐六方(きつねろっぽう)」の演出が用いられています。
この佐藤忠信ってひょっとして狐なんじゃないかな…?という
いわゆる”匂わせ”な六方なんですね。
普通ではとても考えられないような、荒々しく勇ましすぎる動き「六方」…
一度やってみたくなってしまいますね(´▽`)
参考:新版 歌舞伎事典/日本大百科全書(ニッポニカ)