ただいま歌舞伎座で上演中の四月大歌舞伎!
夜の部では「絵本合法衢」が通し狂言にて上演されています。
”片岡仁左衛門 一世一代にて相勤め申し候”と銘打たれており
仁左衛門さんはこのお役をもう二度とお勤めにならないということがわかっている
なんとも切ない思いに駆られる演目であります。゚゚(´□`。)°゚。
またとない機会ですのでこの演目について、
少しばかりではありますがお話いたします。
何らかのお役に立てればうれしく思います。
殺しといえば鶴屋南北
絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)は、
大南北と呼ばれる偉大な江戸の作者・四世鶴屋南北作の演目。
鶴屋南北といえば残虐な殺しや亡霊、
怪奇現象などなど奇抜な趣向をふんだんに盛り込みながら、
文化文政期を生きた市井の人々の暮らしをリアルに描いて
次々にヒットを飛ばした名作者であります。
この絵本合法衢でも善き人たちが次々に容赦なく殺されてしまう
凄惨な場面ばかりが続きますが、そんな救いのない悲劇も
演ずる方の存在感が加わるとこの上なく魅力的に見えてまいります。
なんでもこのお話は江戸時代の実話を集めた年代記に書かれていた
加賀前田家一門の仇討ち事件を元に作られたそうです。
大坂は天王寺の近くにあります合邦閻魔堂にて起こったそうで
実録「絵本合法衢」として伝わっております。
実際にこのような事件があったのだとすればまさしくサイコパスの所業なのですが、
事実はさておいて、南北の手で悪の華の魅力が詰まった演目へと昇華されました。
歌舞伎の絵本合法衢は1810年(文化7)5月江戸・市村座にて初演。
南北が確立した魅力的なキャラクター
下々の人を人とも思わない冷酷非道な権力者
下層社会で虫と同じように人を殺す残酷な無頼漢
気が強いが情は深くて悪事もいとわない悪婆
が複雑に絡み合っています。
初演では冷酷非道な権力者大学之助と残酷な無頼漢太平次を、
鼻高幸四郎との異名を取った名優・五代目松本幸四郎が
それはそれは見事に演じ分けたのだそうです。
この方は鋭い目つきと大きな鼻を活かして
恐ろしげな役を大の得意としていたそうですから想像がふくらみます。
この演目は「立場(たてば)の太平次」「合法(がっぽう)」
などとも通称されています。ぜひ使ってみてくださいね!
参考:日本大百科事典・文化デジタルライブラリー