ただいま歌舞伎座で上演中の
歌舞伎座百三十年
六月大歌舞伎!
昼の部は「妹背山婦女庭訓」「文屋」「野晒悟助」
時代物・舞踊・世話物という大変バランスの良い狂言立てで見ごたえも抜群です!
「妹背山婦女庭訓」は上演頻度も高く大変有名な演目ですので、
この機会に「三笠山御殿」の場面についてお話いたします。
芝居見物の楽しみのお役に立てればうれしく思います!
江戸で人気のボードゲーム柄
恋する気持ちを抑えられず求女さんを追いかけて、
立派な御殿へ迷い込んでしまう田舎娘のお三輪。
緑色の衣裳が印象的な、女形の大きなお役です。
歌舞伎の役柄では、
演じる方の工夫やそのおうちの型などさまざな要因によって
通常と色や柄が違う衣裳が使われる場合もありますが、
お三輪の場合はどなたがお勤めになっても、「萌黄色に十六武蔵文様」と決まっているようです。
十六武蔵文様というのは実は、
江戸時代に流行していたボードゲーム「十六武蔵(じゅうろくむさし)」の盤面の柄であります。
この絵に描かれているのがまさしく十六武蔵。
2人で遊ぶゲームで、宮本武蔵になぞらえた一つの親石を使う側、
十六個の子石を使う側に分かれます。
子石サイドは武蔵の移動先をふさいで動けなくすれば勝ち、
親石サイドは子石の間に割り込んで子石を殺し、数を無くせば勝ち
というゲームなのだそうです。
このゲームは巷でかなり流行していたようで、
豊国をはじめさまざまな浮世絵にも描かれています。
お三輪の衣裳はこの十六武蔵の盤面の模様を下敷きにして、
ゲームに使う石をかわいらしい花丸にデザインして娘らしくしています。
この衣裳が醸し出すおぼこい雰囲気が
結末の悲しさを一層強調しているようにも思え、
なんて洗練されているのだろうと感動してしまいます。
参考:歌舞伎の衣裳