歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい日本振袖始 その一 近松の描く日本神話

ただいま国立劇場で上演されている

平成30年7月歌舞伎鑑賞教室

日本振袖始

この上演で初めて歌舞伎をご覧になった方も

おおぜいおいでのことと思い、少しばかりお話してみます。

わずかでも芝居見物のたのしみのお役に立てればうれしく思います!

今さらですが近松ってものすごいですよね

日本振袖始(にほんふりそではじめ)は、

1718年(享保3年)大坂は竹本座にて初演された

時代物の人形浄瑠璃であります。

 

作者は「日本のシェイクスピア」として知られる

謎多き天才・近松門左衛門です!

近松といえば、今月大阪松竹座でも女殺油地獄が上演されていますね!

歌舞伎の作者には河竹黙阿弥や鶴屋南北などのビッグネームが存在していますが、

その中でも近松というのは人形浄瑠璃で身を立てた方だけに少し味わいが異なるように思います。

命のない人形に演じさせるからこそ、人間の内奥までリアルに描くことができたのかもしれません。

 

女殺油地獄は江戸時代に商人の町で実際に起こった事件を基にしていますが、

日本振袖始はうってかわって遥か昔の日本神話の世界を舞台にしています。

 

本当にざっくりとお話すると、

①スサノオノミコトが奪われた宝剣を求めて美濃国の化け物たちを退治し、

➁出雲の簸の川にたどり着き、

➂八つの頭のある大蛇・ヤマタノオロチの生贄になりそうな恋人・クシナダヒメ(稲田姫)を救い、

④ヤマタノオロチを見事退治し、めでたしめでたし…

というものです。

 

世にも恐ろしいヤマタノオロチはラスボスのよう、

スサノオノミコトはさながらRPGのヒーローであります。

近松はリアリティある人間の内面だけでなく、

心おどる冒険物語も見事に描いてしまうんですね!

天才であるのももちろんですが、教養が非常に深い方だったのだろうと想像します。

 

このヤマタノオロチとの対決にあたるのが「簸の川(ひのかわ)」という場面です。

本来は全五段にわたる作品ですが、昭和15年より長らく上演が絶え、

昭和46年に国立劇場でこの「簸の川(ひのかわ)」の場面が復活上演され、

現在のようにたびたび上演されるようになりました。

 

元になっているスサノオノミコトやヤマタノオロチについては

次回にお話したいと思います! 

 

参考:世界大百科事典/新版歌舞伎事典

新版 歌舞伎事典

新版 歌舞伎事典

 

公演の詳細

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