今月、歌舞伎座にて上演されていた秀山祭九月大歌舞伎!
今回の秀山祭は、能を題材にした演目がたくさんありました。
せっかくですのでこの機会に、そのことにちなんだ歌舞伎の用語について
ごく簡単にお話したいと思います。
次回の芝居見物の際に、何らかのお役に立てれば幸いです!
「能取物」にあって、能にないものとは?
歌舞伎には、能の演目を題材にしたものがたくさんあります。
舞台の背景に大きな松の木を描いて、
能舞台っぽさを演出した「松羽目」については、以前もお話いたしました。
今月上演されていた「三番叟」や「紅葉狩」なども能が題材になっていて、
こうした演目は総合して「能取物」と呼ばれております。
能といえば室町時代から続くお侍さんたちの楽しみであり、
江戸時代の庶民の人々にとってはよくわからない謎の世界であったわけですが、
歌舞伎でもそれっぽいものが見たいぞと工夫を重ねていたのだと思います。
そして歌舞伎の地位が向上した近代以降は、更なる発展を遂げ、
衣裳も大道具も堂々とまねた高級感がぷんぷんしてインテリな感じの
演目がどんどん作られていくようになりました。
かつて庶民の芸能であった歌舞伎も、高尚な芸術へと上り詰めていきます。
しかしながら、能と歌舞伎では根本的に異なることがあります。
それは「三味線」の存在です!
能で使われている音楽は笛・小鼓・大鼓・太鼓という非常にシンプルなもので
能の舞台から三味線と長唄は決して聞こえてきません。
それは三味線が庶民の間で愛された、とても色っぽい楽器であったためであります。
三味線の音はいわばロックのエレキギターのように、
人々の理屈を超えた感情をぐぐーっと掴むエモーショナルな音楽だったんですね。
伝統芸能になかなか触れる機会のない現代では
三味線の音も長唄もなんだか近寄りがたい存在に感じられてしまうかもしれませんが、
本当はもっと庶民の心に寄り添った音として捉えられていたはずです。
それを踏まえて三味線の音を聞いてみると、
江戸時代の人々の生き生きとした暮しが垣間見れるようです(´▽`)
参考文献:新版歌舞伎事典