ただいま歌舞伎座で上演中の
八月納涼歌舞伎!
娯楽性の高い演目が並んだ夏休みらしい公演です。
そんななか第一部「伽羅先代萩」は古典の名作中の名作。
乳人政岡という女形の大役を七之助さんが初役でお勤めになること、
甥にあたる勘太郎さん、長三郎さんがご共演なさることで話題を呼んでいます!
上演頻度も高く、派生した作品もたくさんありますので
今月上演の「御殿・床下」の場面についてじっくりとお話いたします。
芝居見物のお役に立てればうれしく思います!
気丈な政岡の母心
伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)は、
1777(安永6)年4月大坂は中の芝居で初演された演目です。
とはいっても現在の上演スタイルは初演そのままというわけではなく、
別の作品からいろいろと取り入れておもしろくなったという成り立ちです。
「実録先代萩」「裏表先代萩」「伊達の十役」などなど、
伽羅先代萩をアレンジした作品がたくさんありますが
パロディ的なものは元ネタを知っていた方がよりおもしろく楽しめるかと思いますので
まずは今月上演されている「御殿・床下」の場面のあらすじについてお話しております。
歌川豊国/局政岡・仁木弾正・男之助・河津三郎・股野五郎・き世川・菖蒲前・頼政・井ノ隼太
国立国会図書館デジタルコレクション
前回までは、
幼くして足利家の家督を相続した鶴千代君が
御家乗っ取りをたくらむら逆臣たちに命を狙われている、
その鶴千代君の命を守ろうと乳母の政岡が心を砕いている…
という状況のなか、
ついに逆臣側の人間たちが毒入りのお菓子を持参、
それを政岡の実の子である千松くんが毒味役として口にしてしまい、
仁木弾正の妹・八汐になぶり殺しにされてしまうというところまでお話いたしました。
目の前で実の子がなぶり殺しにされているにも関わらず
鶴千代君をしっかりと抱いて表情ひとつ変えなかった政岡…
このようすを見た栄御前は、なるほどそういうことか…と納得。
その場の面々に命じて政岡と二人きりになると、
御家横領の証拠そのものである一味の「連判状」を
政岡に預けて、館から去っていったのです!
なんと栄御前は、
政岡が事前に我が子の千松くんと鶴千代君を取り替えておいたのだろうと、
八汐に殺されたのは鶴千代君だと思い込んだのであります。
確かにそうでもなければ、母親たるもの我が子が殺されるところを
あれほど冷静に見てはいられまいと思われます。
しかしそうではないのです…
政岡の忠義の心は女性性を超越した強さを持っていました。
鶴千代君のピンチをなんとか守り切り逆臣勢を見送った政岡は、
これまで堪えていた悲しみがあふれ出し…
命がけで鶴千代君をお守りした働きは立派であった、
そのおかげで連判状が手に入ったと褒めながらも
千松くんの遺体を抱きしめて嘆き悲しむのでした…。
と、そこへ、
千松くんをなぶり殺しにしたあの仁木弾正の妹・八汐が現れて
政岡に斬りかかってきました!
一体どうなってしまうのか!?というところで次回に続きます。