歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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江戸好きにはたまらない!御園座名物「絵番付」

先日名古屋は御園座へ第五十回記念吉例顔見世を拝見しに出かけた際、

現在は御園座だけに残っている江戸の芝居文化を購入して参りました!

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それがこちら「絵番付」であります!1000部限定500円で販売されています。

限定品ながら千穐楽間際まで購入できラッキーでありました。

「絵番付」とは?

そもそも番付とは江戸時代、

芝居や人形浄瑠璃、おすもうなどの興行の際に刷られたポスターのこと。

 

出し物や配役などを、願いを込めた特徴的な文字や絵でどどんと書き出し、

街角などに貼ったり、ご贔屓さんに配るなどしてお客さんを集めたのです。

芝居の番付にはその用途やタイミングによって様々なタイプがありました。

 

まずは「顔見世番付

歌舞伎役者の一年契約の始まりである11月の顔見世興行は、芝居小屋の勝負時。

今年一年この役者さんを集めましたよ!すごいでしょう、見たいでしょう!

というアピールはもっとも大切で気合の入るものですから、特別の番付が作られました。

大きな紙面の上半分に新旧の役者の名前と前年の所属芝居小屋を並べ、

下半分には似顔絵ではなく役柄の絵姿を書き並べるというスタイルで、

役者たちの序列や力関係などを踏まえながら、文字の太さや位置を工夫したそうです。

なかなかに緊張感のあるお仕事です。

 

続いて、街頭に貼ってアピールするタイプの「辻番付

これは劇場の正面に掲げる絵看板を紙に表したもので、

芝居小屋の座紋、演目や配役、登場人物の絵姿などが書き込まれました。

街角だけでなく床屋さんやお風呂屋さんにも貼られていたそうで、

江戸時代の人々がいかに身だしなみに気を使って過ごしていたかよくわかります。

 

 

そのほか、パンフレットタイプの「絵本番付」なるものもありました。

お芝居のざっくりとした流れを絵と文章で書き記して数ページの冊子にしたもので、

ちょうど現在の筋書のような存在であります。

関西の劇場で現在も筋書が「番付」と呼ばれているのはここから来たのか…と思いきや、

上方では「絵尽」と呼ばれていたとの情報もあり、謎が深まってしまいました。

 

そんな番付は、現在でもおすもうの興行で安価に売られており、

東京の商店などによく貼られていますが、

歌舞伎においては御園座の顔見世にのみ残った文化となっています。

 

今回求めた絵番付をちらりと、一部ご覧に入れたいと思います。

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いかがでしょうか…!!

江戸時代ごっこができるクオリティでありながら

「CBCテレビ」「令和」などの現代ワードも盛り込まれているという、

たまらない味わいです…!!!美しい勘亭流、大変興奮いたします…!!!

 

これはおそらく「辻番付」に近いスタイルなのではないかなと思われます。

絵のタッチはご出演の役者さんに全く似せていないこともおもしろいポイントです。

似顔絵を描いたいわゆる「役者絵」が舞台写真のような存在であったのに対して、

番付に描かれたのは「絵看板」あくまでも役柄の特徴を表現するものでありました。

 

かなりのサイズですので家に貼るのは難しいですが、

江戸時代に思いを馳せつつ大切にしまっておきたいと思います!

ちょうどよく黄色く劣化し、ますます江戸らしくなる日が楽しみです。

 

参考文献:新版歌舞伎事典/ニッポニカ/東京都/JPARC 

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