新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国立劇場ではとうとう三月中の公演の中止が発表されてしまいましたね…。菊之助さんによる義経千本桜の通しはさぞかし素晴らしかったことであろうなと、美しい舞台を想像し悲しみを紛らわせています。。
3月20日からの歌舞伎座公演は再開されると信じ、もう願掛けのような気持ちで、上演される予定の演目についてお話してみたいと思います!
日程がかなり減ってしまいご覧になれる方も少なくなってしまったかと思いますが、次回の上演の際などにお役に立てれば幸いです。
お話したいのは歌舞伎座の三月大歌舞伎 昼の部の「新薄雪物語」
今回は仁左衛門さんと吉右衛門さんのご共演とあって、現在見ることの叶う配役のなかでは最上級の舞台と言っても過言ではないものであります。
ああああ拝見したいですね…!拝見できますように…!!泣
江戸時代の大人気恋愛小説
新薄雪物語(しんうすゆきものがたり)は、1741年(寛保元)5月に大坂は竹本座にて人形浄瑠璃として初演され、その3か月後に歌舞伎に移されて京都の早雲座で初演された演目。
17世紀に刊行された人気小説であった仮名草子の「うすゆき物語」や、それに続いて出版された浮世草子の「新薄雪物語」を題材としたものであります。
「うすゆき物語」はなんと男女の恋文のやりとりによって恋物語が進行していくというなんともロマンチックなつくりの恋愛小説で、読者は物語の内容を楽しむよりもむしろラブレターの書き方の参考書として活用していたそうですので驚きです。
数多の恋路をサポートしたと思われる偉大なる小説ですが、作者は不明。
このすえひろの中高生時代、どなたが作ったものかもわからない恋愛ポエムのような待ち受け画像が爆発的に流行していたことが思い出されます。
ほんとうにざっくりとお話いたしますと、
①園部衛門という男が清水寺で薄雪という人妻を見初めてしまう
②手紙のやりとりをするうち二人は心を通わせ、恋愛成就
③しかし薄雪は病死
④絶望した園部衛門は出家、若くして亡くなる
というもの。大変シンプルではありますが、あのドラマのような、あの映画のような…といろいろ思い浮かぶ普遍性のある内容です。
そんな仮名草子「うすゆき物語」の発刊から実に約90年の時を経て、文耕堂・三好松洛・竹田小出雲・小川半平の合作で、大変重厚なる時代物浄瑠璃が作られたわけであります。
随分あたためたのだなあという印象ですが、このうすゆき物語は江戸時代全体を通じて読み継がれていた大ベストセラーですので、人々の間ではすでにおなじみのものであったのでしょう。
であればなおのこと、「新薄雪物語」っていいながら「うすゆき物語」とここまで違う物語を作っちゃうのかーいとつっこみたくなるようなお芝居です。
演目の内容については、次回からお話してまいります!
参考文献:新版歌舞伎事典/床本集/増補版歌舞伎手帖/日本大百科全書(ニッポニカ)