緊急事態宣言が発令されてしばらく経ちますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
すえひろはといえば、松竹チャンネルや国立劇場チャンネルで無料公開されている動画をむさぼるように拝見しながら日々を過ごしております。
このような日々にあって歌舞伎を見ることができるよろこびたるや尋常でなく、無観客にて収録を行い芝居の映像を届けてくださったことには、ただただ感謝の思いでいっぱいです。
せっかくですので毎月劇場へ出かけていた時と同じように、備忘録として感想を残していきたいと思います!
三月大歌舞伎 沼伊賀越道中双六 沼津
今回は三月大歌舞伎夜の部に上演されるはずであった「伊賀越道中双六 沼津」の感想を…
「伊賀越道中双六 沼津」は、呉服屋の十兵衛が旅の道中、雲助の老人・平作に偶然出会って親しくなるうち、幼いころに生き別れた実の父であったことが判明、しかも仇討ちの敵同士であった…というお話。親子の情愛とそれぞれの葛藤が見事に描き出された屈指の名作として知られています。
今回は実際の親子である白鸚さんと幸四郎さんが、それぞれ平作と十兵衛をお勤めになるという記念すべきものでした。なおかつ、白鸚さんにとっては初役、幸四郎さんも代役としてお勤めになったことはあるものの本役としては初めてであります。
お二人ともにとても初役とは思えず、孝太郎さんのお米の味わい深さも相まってお芝居の世界にぐいぐいと引き込まれ、最後にはおいおい泣いてしまいました…。。三人の胸のうちが自分の心に直接入ってくるような独特の没入感がありました。
白鸚さんは今回の平作を「一世一代と言っても構わない」とおっしゃっていて、動画を拝見しても本当に素晴らしい舞台であっただけに、このような事態に陥ってしまったことが残念で残念でなりません。ぜひもう一度、いや一度といわず何度もお勤めになっていただきたいです。
そして幸四郎さんの十兵衛は、声の抑揚はもちろん、お米と初めて会った時のはにかんだ表情、ふと後ろを向いた時の背中の丸まり加減などなど本当に細かな点まで吉右衛門さんの十兵衛を見事に踏襲されていて、素晴らしい限りでありました…
歌舞伎座が再開場となった暁には、お二人の沼津をぜひ実現していただきたいと切に願っております。
そして沼津恒例の客席降りの場面では、当然ながら誰ひとりお客のいない観客席が映っています。
ともすれば寂しくなってしまうこの場面でも、まるで切符代を奮発して一階の二等席に座っているかのようなぜいたくな気分になれたのは、白鸚さんと幸四郎さんの素晴らしいサービス精神あってのものだと思います。
一等席にひしめき合うおめかしをした方々、白鸚さんと幸四郎さんの姿を見ようと振り返り、ライトに照らされたお客さんたちの笑顔などが頭にありありと浮かび、それがなんとも懐かしくって涙が出てきました。
たとえ狙って切符を購入したとしてもなかなか難しいと思われる超ピンポイントなお地蔵さん体験は今だけの特別なものですので、まだご覧になっていない方はぜひチェックなさってみてください!
「伊賀越道中双六 沼津」の配信は4月26日(日)23:59:59まで。
せっかくの機会、どんどんシェアして楽しいおうち時間を過ごしましょう!