歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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【読書録】「歌舞伎に女優がいた時代」小谷野敦著

いよいよ39県で緊急事態宣言が解除される運びとなりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?このすえひろの住まう東京都はまだ解除できる状況ではないようですが、可能な範囲でぐるぐると経済を回してゆきたいものです。

そう思い立って先日amazonで書籍を大人買いするなどしました。amazonで働く方や物流の方にお世話になり、大変ありがたく思います。時間をかけて本を片付けた傍から何をやっているんだろうと思いつつ、到着した新しい本にも着手、積読本にも着手、2周目の本にも着手…と、気持ちのおもむくまま並行読みを進めております。

そんななかからおもしろかったものやお役に立ちそうなものを、備忘録を兼ねてご紹介いたします。何らかのお役に立てればうれしく思います!

「歌舞伎に女優がいた時代」 小谷野敦著

作家・比較文学者の小谷野敦先生の新書。今年の3月に出版された中公新書ラクレであります。

歌舞伎に女優がいた時代 (中公新書ラクレ)

歌舞伎に女優がいた時代 (中公新書ラクレ)

  • 作者:小谷野 敦
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 新書
 

 

本書は、江戸から昭和の戦前期までに歌舞伎の舞台で活躍していた女性たちについて広く紹介するものです。

各章の内容としましては

第一章:出雲のおくに

第二章:大名屋敷の奥で女歌舞伎を披露した「お狂言師」

第三章:九代目團十郎に認められた女役者「女團洲 市川久米八」

第四章:明治時代に活躍した女役者を列挙し各人を紹介

第五章:舞台に上がった市川團十郎家の女性たち

第六章:帝国劇場で上演されていた「女優歌舞伎」

といったものです。

九代目團十郎の長女実子(市川翠扇)のことはさまざまな書籍でお名前を拝見しますが、こんなにもたくさんの女性が歌舞伎の役者としてバリバリと活躍していたことは全く存じ上げず驚くばかりでありました。

非常にマニアックな情報がドバドバと盛り込まれておりますので、近ごろ歌舞伎に興味を持たれたばかりの方には強くお勧めはいたしませんが、先々明治時代の名優にまでご興味が広がるようなことがあればお手に取られると良いかと思います。

 

今後も歌舞伎の舞台に女性が上がることはおそらくないであろうと思いますし、個人には「女性も平等に歌舞伎の舞台に上がった方が良い、そうすべきだ」と活動したいという意欲も一切ありません。その思いは本書を読む前も、読んだ後も少しも変わりませんでした。

むしろ本書を読んでもなお、女性が歌舞伎の演目を演じているようすをまったくもって想像すらできないというのも事実であります。

しかしながら、ああこうした方々がいたんだなあ…と知ること自体がシンプルにおもしろい、そんな感想を抱きました。

 

やはり明治時代の興行の世界というのは、今から考えますと信じられないような出来事が山ほどあって、知れば知るほどにおもしろいものですね。

現在広く伝えられている歌舞伎観をひっくり返すような情報に触れるにつけ、「伝統芸能」というのは一体どういった意味なのかなあなどと考えます。

 

しかしながら、そういった看板に踊らされるのは無知で愚かなことなのかというと、個人的には全くそうは思いません。

むしろそんな看板そのものが最高の幻想、美しきドリームであると思われ、たとえ様々な情報を得たとしても、芝居を見る時にはとにかくいつまでもうかうかと浮かれていたい、いや浮かれてしまうに違いないと思います。

とにもかくにも、一日も早く芝居が見たいものです。

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