上演されるはずであった五月の歌舞伎興行もそろそろ千穐楽が近づく頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
すえひろは近ごろ芝居が見たくて見たくて見たくてたまらず、そろそろ禁断症状が出るころなのかなあと感じております。
ですので保管している過去の芝居映像を掘り出すなどして週末の芝居見物を楽しんでおりまして、今日は團十郎さんの「勧進帳」を見てみました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。
2007年3月パリオペラ座ガルニエ宮公演「勧進帳」
今回拝見した團十郎さんの「勧進帳」の映像は、2007年3月にフランス・パリのオペラ座ガルニエ宮で行われた記念すべき歌舞伎公演でのもの。弁慶に團十郎さん、富樫が海老蔵さん、義経が亀治郎時代の猿之助さんという配役です。
セリフや長唄はもちろん大向こうの方の声も鮮明に入っていて、オペラ座はさすがの音響であるなと驚かされました。
オペラ座ですので当然花道はないわけですが、この公演は仮の花道を設置せずに行われたようで、出や六方などの花道での見どころすべてが舞台の上で行われているのもおもしろいポイントでありました。
が、それ以上に新鮮に感じられたのは、セリフや長唄のテンポが非常に速く感じられたことであります。よくわかりませんが外国の方に向けた公演であるために、集中力を保ったり感情移入をしやすくするための工夫であったのでしょうか。
先日の「NEWシネマ歌舞伎 三人吉三」でも感じたことですが、セリフが早いと芝居がよりリアルに感じられて理解しやすいということは、未来の歌舞伎はかなりのアップテンポになるのではないかと思われました。
團十郎さんの弁慶は、豪華絢爛なオペラ座の内装を圧倒するような大きなオーラを放っていて、独特の存在感やお声がたまらなく懐かしく思われました。全身全霊の緊迫感を放ちながらも、とにかく明るくてほのかな愛嬌も漂う弁慶です。大好きでした。
團十郎さんの「敬って申す」の「て」に「p」の破裂音が加わっている発声の感じを勸玄さんはすでに習得なさっているように思われ、そのスター性とともに今後のご成長が本当に楽しみだなと思われます。
対する海老蔵さんの富樫はシャープでありながら葛藤も見え、声のトーンや佇まいに美しい陰りがあって、好みの富樫でありました。個人的に海老蔵さんは底抜けに明るい役よりも影のある役の方が好きで、どちらかといえば富樫の方が好みであります。
海老蔵さんが團十郎を襲名なさってからは富樫を拝見する機会が減ってしまうのではないかと思われ、もっと拝見しておきたかったなあと思いました…。そういった意味でも貴重な映像です。
いや、勸玄さんの團十郎に海老蔵さんの富樫が先々見られるかもしれませんね…!想像しただけで胸が熱くなります…!そのためにも健康に気を付けて長生きせねばなりません。
余談ですが、猿之助さんのフランス語の口上が流暢でさすが暁星のご出身であるなと思われました。この公演はDVDにもなっていますので、ご興味お持ちの方はぜひチェックなさってみてくださいませ!