歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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八月をふりかえり… 2020年

早いもので八月も今日でおわり…今月は、新型コロナウイルスの影響によりながらく公演が中止していた歌舞伎座が、めでたく再開場するという大変記念すべきひと月でありました!!

初日に拝見した「棒しばり」での勘九郎さんのうれしそうなお顔がいまだに目に焼き付いています。あの幸せなお顔は忘れることができません。

自分自身もこれまで歌舞伎興行を念頭に置いた生活を送っていたものですから、あのお顔を拝見して三月より止まっていた時計が一気に動き出したような思いがいたしました。大げさかもしれませんが、「生きている」という実感とでも申しましょうか。

 

歌舞伎座で過ごす時の豊かさ

ひと月が過ぎたいま鮮明に思い出されるのは、歌舞伎座へ一歩足を踏み入れた瞬間の、足ごと埋まってしまいそうなフワッとした心地です。家では決して味わうことのないあの感触が泣きたいほどに懐かしく、つい目頭が熱くなりました。

歌舞伎の舞台そのものの素晴らしさはもちろんのこと、劇場細部にふんだんに施された「贅沢」の計らいとでもいいましょうか、歌舞伎座で過ごす時間そのものがなんと豊かなことかと思い知らされたように思います。 

 

そうして拝見した演目の中に「新しい日常」や「みんなで力を合わせて乗り越えよう」といったメッセージは一切ありません。ただただ美しく華やかで、日常のことをひととき忘れて心がうきうきとするという、そういった時間です。これを待っていました。

この大切な時間が戻ってきたことがうれしくて、歌舞伎そのものや歌舞伎に携わるすべての方がいかに自分自身の人生に彩りを与えてくださっていたかを実感したのでした。

 

とはいえ以前と同じ興行のスタイルはまだ難しく、歌舞伎に限らずさまざまな演劇ジャンルがいまだ苦しい状況にあることに変わりはないようです。

例えば宝塚歌劇団で感染者が発生しクラスターに認定された…というところまではテレビで何度も何度も見かけたのですが、「演出を変え来月より公演再開する運び」という前向きなニュースは個人的にまだテレビでは出くわしておらず、そもそも演劇好きでないと出会えない情報になってしまうのかなと大変無念に思います。

今月の歌舞伎座公演が大きな感染拡大を招くことなく無事に千穐楽を迎えたということをひとつの証明として、演劇を見に出かけるという行為が少しづつ広がってゆき、徐々に演劇界全体が活気づいていくことを願うばかりであります。

 

それはそうと、漫画やアニメに非常に疎いこのすえひろも現在「鬼滅の刃」にハマっております!

きっかけは勘九郎さんが先月の配信で、勘太郎さんが鬼滅の刃に夢中になっておられるという話題になり勘九郎さんが「新作歌舞伎にできそうだ」というようなことをおっしゃっていたことです。

 

「鬼滅の刃」を拝見してみますと勘九郎さんのおっしゃる通り、まさに歌舞伎にぴったりの物語であるなと感服いたしました。江戸の仮名手本忠臣蔵、近代の研辰の討たれときて、新時代の仇討として古典的に仕上げることもできそうだなあ…!とひとり妄想しております。 

8月に入ってHuluで毎日コツコツと1話ずつ拝見し、先日ようやく最終話を見終え、映画の公開を今や遅しと待っている状況であります。原作を読もうか、しかし結末を知ってしまうのは寂しい…と苦悶の日々を送っています。

 

個人的に、これまでに歌舞伎化されたワンピースもNARUTOもナウシカも、元の作品をあまり知らず愛着を持たないまま歌舞伎版を拝見してしまったことが心残りでした。

江戸時代にもヒットした読み物が歌舞伎化されるというようなことはあったのですから、今まさにヒットの最中に身を置いている自分自身がその流れの中で愛着を持って接することで、真に当時の状況を追体験することにはなるのではないかと考えたためです。

実現するかはまったくもって不明ですが、人気アニメや漫画の歌舞伎化の流れは今後も続くのではないかと思われ、可能性は0ではないのではないでしょうか…!妄想だけがはかどっております。

 

さて、来月はどんな芝居が待っているのでしょうか。

楽しみに今夜は休みたいと思います。おやすみなさいませ。

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