歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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第三部を見てきました! 2020年九月大歌舞伎

先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして九月大歌舞伎の第三部「双蝶々曲輪日記 引窓」を拝見してまいりました!とにかく言葉にならない素晴らしさであり、いつかまた全国から芝居好きの方々が駆け付けた満員の歌舞伎座で、再び拝見したい舞台でありました。言葉にならないとは言いながら、備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

濡髪の存在感

今月の双蝶々曲輪日記 引窓の主な配役はこのような具合であります。豪華です…!

みなさまお元気で舞台に立たれていることがうれしくてたまらないばかりか、数か月歌舞伎座の舞台が開かなかったことなど全く感じさせない名演でありました。

濡髪長五郎 吉右衛門さん
南与兵衛後に南方十次兵衛 菊之助さん
お早 雀右衛門さん
お幸 東蔵さん

引窓は派手さこそないものの、人の心の温かさと情景の美しさが染み入り個人的に大好きなお芝居です。

これまでは南与兵衛とお幸の義理の親子の思いのやりとりを堪能するぞという意気込みで拝見しておりましたが、今月は濡髪を吉右衛門さんがお勤めになっていることで、濡髪の存在感が爆発していました。

その結果、物語の見え方そのものが大きく変わり、それぞれの役どころと人間関係がぐっと立体的に見えてきました。物語世界の事情の中に自分自身も身を置いているような感覚です。

それぞれに交わすセリフのない場面でも、濡髪が母のお幸とその現在の家庭を思う気持ち、そしてお幸、お早がそれぞれの立場から濡髪を大切に思う気持ち、与兵衛の葛藤が強烈なリアリティを持って胸に迫ってきて、なんてしみじみとした良い物語なんだろう…とじんわりと胸が温まり涙が出るような、とにかく素晴らしい時間でありました…。

このような事情のなかぜひにお出かけくださいとも申し上げられないのですが、本当に一人でも多くの方にご覧いただきたい素晴らしい舞台でありました…歌舞伎オンデマンドでの配信やテレビ放送があることを切に願っております…!

公演の詳細

www.kabuki-bito.jp

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