先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして九月大歌舞伎の第二部「色彩間苅豆」を拝見してまいりました!恐ろしい演目なのですが、なんともいえぬ色っぽさがありました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。
愛らしさと恐ろしさ
今月の色彩間苅豆の主な配役はこのような具合です。
与右衛門 幸四郎さん
捕手沢田 隼人さん
同 飯沼 鷹之資さん
かさね 猿之助さん
幸四郎さんの与右衛門は登場の時点から関わってはならない香りがぷんぷん漂っていて、対する猿之助さんのかさねは序盤の可憐さがたまりませんでした。
特に与右衛門に身ごもったお腹をちょっと触らせるようすなどほんのりと色っぽくて、この後の運命を思うとつらくなってしまうような愛らしさがありました。であるからこそ、苦しみながら命を落とし怨霊になっていくさまが悲しくて恐ろしかったですね…無念が胸に迫り、ゾワゾワといたしました。
カマと卒塔婆が突き刺さったドクロがどんぶらこと流れてくるなど、怪談というよりもホラーを感じてしまい個人的にこの演目はそんなに好きなものではなかったのですが、怪談らしい湿度を感じました。
また、立ち回りで隼人さんと鷹之資さんの口元が黒い布に覆われていて、アサシンさながらでカッコよかったなと思いました!役者さんですからせっかくのお顔を隠してしまうのはもったいないというご意見もあるかもしれませんが、目元の迫力や姿形の美しさが浮き彫りになりおもしろかったです。特に鷹之資さんの体幹が特に素晴らしいなと思いました!
これは余談なのですが、私自身がこれまでに拝見した色彩間苅豆の中で福助さんがかさねをお勤めになっていた時のものが今でも強く印象に残っています。
これは記憶からの印象であって、本当にそうなさっていたのかは不明なのですが、幕切れで福助さんのかさねがほんのわずかに口元に笑みを讃えていたような印象があります。
それがとても美しくて妖艶で、美しいからこそもう本当に恐ろしくてですね……確か真夏だったような気がするのですが、ゾッとしながら歌舞伎座を後にしたのを覚えています。福助さんのかさね、またぜひ拝見したいです。