ただいま歌舞伎座にて上演中の九月大歌舞伎。新型コロナウイルスの感染防止対策として幕間なしの各部完全入れ替え、四部制にて上演されています！
第二部「色彩間苅豆」は人気のある幸四郎さんと猿之助さんがお勤めになっている、古典怪談をもとにした悲しく恐ろしい悲恋の舞踊劇であります。
初めてご覧になる場合はナゾな部分も多いかと思いますので、少しばかりお話したいと思います。今月の芝居見物だけでなく、再び上演される際や映像公開の際の答え合わせのお役にも立てればうれしく思います。
ざっくりとしたあらすじ 上
色彩間苅豆（いろもようちょっとかりまめ）は1823年（文政6）6月に江戸は森田座で初演された清元節の歌舞伎舞踊。作詞は松井幸三、作曲は初世清元斎兵衛で、「かさね」の通称でも知られる演目です。
三代歌川豊国 見立三十六歌撰之内藤原敏行朝臣累の亡魂
国立国会図書館デジタルコレクション
もとは怪奇・残忍・残酷・無惨といったハードなキーワードで語られ、現代においてもファンの多い江戸の名作者・四世鶴屋南北の「法懸松成田利剣(けさかけまつなりたのりけん)」の中の一幕であったもの。茨城県常総市に伝わる怪談「累（かさね）」の伝説がもとになっています。
では、その内容をざっくりとお話していきたいと思います。配役やタイミングによって内容が前後したり、変わったりすることがありますのでその点はご了承くださいませ。
舞台は夏の木下川堤。川辺の暗く寂しい夜道、雨上がりのむわっとした空気の中を、与右衛門という男が人目を忍びながら逃げてきます。
この男はもともと武家に仕えていましたが、その家の腰元であるかさねと不義密通。家にかさねを残したまま、「死ぬ」との書置だけ残して逃げてしまったのでした。20歳近く年下のかさねを自分のものにしてしまうというなかなかの色男であり、罪なことをする人物です。
そんな与右衛門を追って、かさねもこの木下川堤にやってきました。
そもそも二人が出会ったのは去年の秋。法要ですっかり与右衛門に恋してしまったかさねは、なんと現在与右衛門の子を身ごもっているというのです。
これは大変なことになりました。かさねはまだ少女といっていい年ごろ、幼子を抱えたうえ恋しい与右衛門がいなくなってしまっては、どうしてよいかわかりません。
そういうわけであるので、「私も一緒に死なしてください」とすがりつくかさね。
与右衛門も「もう仕方ない、心中をしようか…」と決意して、二人は両親に向け先立つ不孝を詫びながら、大いに嘆き悲しみます。
そんな折、なにやらどんどこどんどこと怪しげな風が吹いてきて、川上から何かが流れてきました…これは一体？というところで、中に続きます！
参考文献：新版歌舞伎事典／舞踊名作事典／歌舞伎登場人物事典／増補版歌舞伎手帖 渡辺保／日本大百科全書／朝日日本歴史人物事典
