歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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十月をふりかえり… 2020年

早いもので今月も今日でおわり…。ハロウィンの今日は勘九郎さんのお誕生日でしたね!おめでたいことであります!歌舞伎の舞台で再びお姿を拝見できる日を心待ちにしております。

楽しみを求める心の強さ

今月はなんといっても、半年以上待ちわびていた仁左衛門さんのお芝居を拝見できたことが心の底からうれしく、初日に歌舞伎座へ出かけた日には医療従事者の方々を筆頭に様々な方面の方々への湧き上がるような感謝の思いで胸が熱くなりました。

最後に拝見した二月「菅原伝授手習鑑」の千穐楽の日には、まさかこんなに長く拝見できなくなってしまうとは想像だにしませんでしたが、久しぶりに拝見した仁左衛門さんのお芝居からは7カ月間の空白など微塵も感じず、時がそのまま戻ったかのようでした。

 

ある日の芝居見物の際など、幕切れの花道の引っ込みの際に「松嶋屋!」という声がかかったような気がしてしまったくらいです!

聞こえないはずの大向こうを脳内再生できるほど、かつてのにぎにぎしい歌舞伎座にいた時と同じように心を高揚させることができたことは、本当にうれしいことです。様々な当たり前が失われてしまったなかでも、現状において最大限楽しもうとする人の心のたくましさを感じ、とてもうれしくなりました。

 

三月の「新薄雪物語」、四月の巡業「すし屋」、團十郎襲名の「勧進帳」、七月の「江戸唄情節」と、待ちわびながらも中止になってしまった芝居の数々、ひとつひとつはとにかく無念でありましたけれども、そういった気持ちがすべて消えていくような素晴らしい時間で、これこそ自分の生きがいであったなと思い出させていただきまさに感無量でありました。

 

今月で既に感情のピークであったのですが、来月は国立劇場、再来月は南座と、たくさんのお芝居が予定されていることがうれしくてうれしくてたまりません。

これから気温も下がり空気も乾燥していきますが、あのような不安な日々に戻らぬよう気を引き締め、日々こまめな手洗いに励んでまいりたいと思います。

 

 

余談ですが、今月は現在社会現象を巻き起こしている作品「鬼滅の刃」の映画も拝見しまして、おいおい泣いてまいりました。月岡芳年や歌川国芳など幕末期あたりの極彩色な浮世絵の世界に体ごと入っていくような体験はとにかく素晴らしかったです…!

最初はジャンプ歌舞伎化の流れにマッチしそうだし内容を把握しておきたいという軽い気持ちで見始めたのですが、その目的はいつの間にかどこかへ行き、すっかりどハマりしています。映画もあと2回は見そうです。

 

江戸時代にも十返舎一九の「東海道中膝栗毛」がとんでもない売れ方をする一大ヒットコンテンツとなり、登場人物の弥次さん喜多さんは誰もが知る存在になり、旅を視覚化した浮世絵の「東海道五十三次」も大流行りし、庶民も動き出して空前の旅行ブームを巻き起こした…という長期的な社会現象があったかと思います。内容は違いますが、まるでその渦を疑似体験するような日々に大いに興奮しています。

 

今年「エンターテインメントは不要不急なのか」というテーマが突き付けられるなかで、大きな希望を感じるムーブメントです。物語はいつの世も人に力を与えてくれるのですね…。物語の世界は人が生きる上で要であり、急であると確信しました。

 

さて、来月はどんな芝居が待っているのでしょうか。

それを楽しみに今夜はそろそろ休みたいと思います。おやすみなさいませ。

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