歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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本日・當る丑歳 吉例顔見世興行 千穐楽!2020年12月

本日19日は京の年中行事 當る丑歳 

吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎の千穐楽でした!おめでとうございます!

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18日から秀太郎さんがご復帰

今年の顔見世は先月国立劇場にご出演だった孝太郎さんが新型コロナウイルスに感染された影響から、第二部「熊谷陣屋」は初日から休演・代役が複数発表され、その後も第二部で休演の発表が相次ぐというイレギュラーな公演でありました。

濃厚接触者に認定されていた熊谷次郎直実の仁左衛門さんが7日からご出演になり、その後孝太郎さんが回復され相模としてご出演でしたが、藤の方の秀太郎さんは別件の体調不良にて休演されたままで、もう今月は最後までお休みになるのかなと心配しておりました。

しかし秀太郎さんも昨日18日からめでたくご復帰の運びとなり、最後にきて熊谷・相模・藤の方が当初の配役で揃うこととなったのです。完全版は18日・19日のみという貴重さであります。

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実はこのすえひろもちょうど昨日京都に出かけまして、貴重な第二部を拝見することができました。チケットがすぐに売り切れてしまったのも納得の素晴らしい熊谷陣屋でありました…2020年の芝居納め、泣き納めです。

 

義経から「由縁の人もありつらん、見せて名残りを惜しませよ」と言われて相模に首を渡すくだりで熊谷から小次郎の首が直接手渡されるのですが、ここで仁左衛門さんの熊谷が小次郎の首にそっと添えていた手の優しさが忘れられません。

その部分だけさむらいのものではなく、大切な息子を抱きしめるお父さんの手に見え、悲しくて悲しくて胸に迫りました。

幕切れの「夢であったなあ…」はしみじみとして、ドラマチックな派手さではなくぐっと胸に染みわたるような味わいがありました。今回は花道を見上げるような角度から拝見していたのですが、笠で耳を塞ごうとする熊谷の口元から、何かを断ち切ろうとする人のもがきがありありと見え、鳥肌が立ちました。

 

仁左衛門さんのお芝居は体のすみずみまで練り上げられていて、すべてを味わい尽くすには目がいくつあっても足りないなといつも思います。

先月末にはどうなることかと思い生きた心地がしませんでしたので、とにかく仁左衛門さんのお元気で舞台に立たれているお姿を拝見できただけで、本当に心の底から安堵いたしました…よかったです。。最高の芝居納めでした。

 

チケットを取ったころは例年通り宿泊してあちらこちらを見物したり食べ歩いたりすることを夢見ておりましたが、土日に出歩くのを控えるため宿はキャンセルし、粛々と南座に行って二部を見て帰るという旅になってしまいました。南座のなかにもいつものようなにぎにぎしさはなく、なんとも寂しい気持ちでありました。

しかしこのような状況にあって、貴重な芝居を拝見できただけでも本当にありがたいことです。来年の暮れこそは、ぎゅうぎゅうに人のひしめく南座で顔見世を楽しむことができますように。

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