歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい 歌舞伎十八番の内 毛抜 その一 あらすじを簡単に

ただいま新橋演舞場で上演中の初春海老蔵歌舞伎

海老蔵さんとともにぼたんさん勸玄さんもご出演とあって、チケットが瞬く間に完売してしまった大人気の公演であります。

1月17日(日)の千穐楽はオンラインにて生配信される予定であり、全国の方が待ちわびておられるのではないかなと思います。しかも歌舞伎法興行で初めての試みということですから見逃せません。実に楽しみですね!

今回上演されるお芝居のひとつに「歌舞伎十八番の内 毛抜」というものがあります。クセ強めの主人公が登場する、明るく朗らかで愉快な演目です。

今回初めてご覧になる方も多いかと思い、起承転結形式でごく簡単にあらすじをお話いたします。当日の予習などにお役立ていただければ幸いです。

「髪が逆立つ奇病」を磁石で解決する話

毛抜(けぬき)は、市川團十郎家の家の芸を十八集めた「歌舞伎十八番」のうちのひとつです。日用品として今でも使われている、まさしくあの毛抜のことであります。

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鑷 粂寺弾正 一陽斎豊国 国立国会図書館デジタルコレクション

1742年に初演されたお芝居のなかの一幕で、約400年といわれる歌舞伎の歴史の中でも特に古い時代のお芝居です。明治時代に入ってから復活され人気狂言として今に至ります。古い時代のお芝居には、のびのびとした大らかさという特徴があります。

複雑な心理描写ですとか筋立ての理屈などはさておき、歌舞伎役者を見た!ということをひたすら喜ぶようなものです。ですので、役者さんご本人の魅力や華、愛嬌や存在感といったものがとりわけ重要になります。

 

それでは、ごく簡単に4ブロックに分け、お話のあらすじをお伝えいたします。

あらすじ起承転結

:小野春道家のお姫様・錦の前は、縁談を控えた身で「髪が逆立つ」という奇病にかかってしまった。

:そこへ縁談の相手方の家臣・粂寺弾正がやってきたので、家老・八剣玄蕃が「破談にしてほしい」と申し出る。 

:粂寺弾正は、毛抜でヒゲを抜きながらどうしたものかと思案。ふとした瞬間に毛抜がひとりでに動いていることに気が付き、ひらめきを得る。

:粂寺弾正が天井を槍で突くと、磁石を持った男が潜んでいた。姫の奇病は、かんざしや笄がこの磁石と反応したために起こっていたのである。

すべてはお家乗っ取りを企む八剣玄蕃のしわざであると見抜いた弾正がこれを成敗し、めでたしめでたし。

 

舞台のうえでは、粂寺弾正の身にほかにもいろいろなことが起こります。

「○○の短冊」「○○の鍵」「○○の刀」などといった重要らしいアイテムも登場して混乱してしまうのですが、ひとまずは「小野家で最も大切な品物=お家乗っ取りに利用されかねない」という認識でご覧になると良いのではないかと思います。

 

そうした点よりもむしろ、美しい若衆や腰元を次々に口説いてはフラれる、「この家の小野春風のせいで妊娠した妹が死んでしまったので返せ」という男に「閻魔大王と友達だから」と言ってやりこめる、といった愉快なくだりの方が、「毛抜」のみどころとして知られています。

上記の起承転結さえつかめば決して難しい内容ではありませんので、初めての方もぜひご一緒に楽しみましょう!

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