歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい 歌舞伎十八番の内 毛抜 その二 粂寺弾正の魅力

ただいま新橋演舞場で上演中の初春海老蔵歌舞伎

海老蔵さんとともにぼたんさん勸玄さんもご出演とあって、チケットが瞬く間に完売してしまった大人気の公演であります。

1月17日(日)の千穐楽はオンラインにて生配信される予定であり、全国の方が待ちわびておられるのではないかなと思います。しかも歌舞伎法興行で初めての試みということですから見逃せません。実に楽しみですね!

今回上演されるお芝居のひとつに「歌舞伎十八番の内 毛抜」というものがあります。クセ強めの主人公が登場する、明るく朗らかで愉快な演目です。

今回初めてご覧になる方も多いかと思い、。当日の予習などにお役立ていただければ幸いです。

あらすじはこちら

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海老蔵さんの衣裳にもご注目

毛抜(けぬき)は、市川團十郎家の家の芸を十八集めた「歌舞伎十八番」のうちのひとつです。粂寺弾正(くめでらだんじょう)という男が、お姫様を悩ませる問題を解決する物語です。

歌舞伎十八番には、力がみなぎり人間離れした荒々しいヒーローを表現した「荒事(あらごと)」と呼ばれるジャンルの役どころが多いのですが、粂寺弾正は数々の見得を披露する荒事らしさを見せつつ、特殊な魅力を発揮している人物です。

・男女問わず色を好む

・絡んできた男もおしゃれなユーモアであしらうことができる

・悪人を見抜き科学的推理も行う知性を持つ

といったところでしょうか。ほかの荒事にはなかなかないダンディズムと申しますか、愛嬌や大人のユーモアが香っていて、このすえひろも大好きな役のひとつです。

 

お家乗っ取りや婚礼問題など様々なトラブルが発生している家に現れ、知恵や情で問題をスパッと解決してくれるような役どころを歌舞伎では「捌き役(さばきやく)」と呼ぶのですが、この粂寺弾正も捌き役の一種です。

一般的な捌き役が爽やかでクールな印象を与えるのに対し、粂寺弾正は腰元や若衆に口説いてはフラれ、観客に向かって「面目次第もござりません」と言ってみせるというような独特の柔らかみを持っています。今様に申しますと愛されキャラというようなところでしょうか。

 

粂寺弾正の衣裳には海老があしらわれたものや碁盤があしらわれたものなどのパターンがあり、今回の海老蔵さんはまさしくこの錦絵のような衣裳をお召しのはずです。

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鑷 粂寺弾正 一陽斎豊国 国立国会図書館デジタルコレクション

着物は亀甲牡丹紋という團十郎家ゆかりの牡丹をあしらった文様、そして裃には壽の字のようにかたどられた海老の模様が入っています。

海老蔵さんがお召しになるのは海老蔵さんのおじいさんにあたる十一代目團十郎がこうした七代目團十郎の錦絵を参考にして考案されたものであり、外のおうちの方が粂寺弾正をお勤めになる「毛抜」では見られない衣裳ですので貴重です。

カッコいいですよね。ぜひこちらもご注目くださいませ!

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