ただいま歌舞伎座では二月大歌舞伎が上演されています。
第二部「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」は、近年もしばしば上演されている演目です。
上演形態はその時によりいろいろですが、今月上演されるのは玉三郎さんの土手のお六と仁左衛門さんの鬼門の喜兵衛というワルなカップルが、ゆすりかたりをしようと画策するという場面であります。
過去にお話したものがいくつかあり散らかっておりますので、ここにひとつまとめてみます。何らかのお役に立てれば幸いです。お話が足りていないので今月また折を見てお話を追加していきたいと思います。
そもそも於染久松色読販とは
於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)は、「大南北」と呼ばれた名作者・四代目鶴屋南北作のお芝居。1813年(文化10)の3月、江戸は森田座で初演されたものです。
通常は「お染の七役(ななやく)」という通称で知られていて、下記の七役をたった一人で早替わりを交えながらお勤めになるということが眼目となる演目です。
お染
久松
許婚お光
お六
賤の女お作
奥女中竹川
お染母貞昌
題名にも入っているように太字のお染久松が主人公といえる物語なのですが、今月上演される部分にはこの二人は登場いたしません。今月はお染久松ではなくて赤字になっている土手のお六が主人公の場面が上演されます。
土手のお六は、愛する人のためなら悪さもしてしまう「悪婆(あくば)」と呼ばれる役どころ。夫である鬼門の喜兵衛は悪人で、夫婦そろって恐喝や詐欺まがいの行為に手を染めるどうしようもない二人であります。
しかしながらなんだか詰めが甘くて憎めないというのがおもしろいところで、役者さんの魅力が際立つ楽しい一幕であります。
「かかぁ煙草と評判の」土手のお六
土手のお六とその生業についてお話した回であります。江戸時代の町のはずれにはこんな人がちらほらといたのかなあと、つい妄想してしまいます。
ここまでのお話
そしてこちらは登場人物たちを結びつける刀「牛王吉光」にまつわるお話です。
今月出ていないお染久松とお六喜兵衛夫婦の間に一体どんな関係があるのか、裏事情がおわかりいただけるかと思います。
そもそもお染久松とは
直接関係はありませんが、「お染久松」とはなんのことかということをお話した回がこちらです。お染久松は他にもさまざまな演目に登場する有名カップルですので、把握しておくと後々便利かと思います。