本日、片岡秀太郎さんの訃報がもたらされましたね。
大好きでした。心の準備というとおかしいのですが、そういった想定を少しもしていなかったので、あまりにもショックすぎて言葉になりません。本当なのでしょうか。本当なのだと頭ではわかっていますが、自分のなかで事実にしたくなく、ついそう思ってしまいます。
私が最後に拝見したのは2020年の京都の顔見世「熊谷陣屋」でした。2日間しかなかったご復帰の舞台をたまたま拝見できたことは何よりの宝です。上方の地で味わう大好きな松嶋屋の舞台は格別でした。同時に、あれで最後だったんだと思うと胸が潰れるようです。
格調ある役から世話まで大好きなお役は数々ありとても挙げきれませんが、特に好きなのは義経千本桜 木の実の小せんでした。花道で権太に後ろ姿がみずみずしいなあと言われた時の表情であったり、着物の裾をめくりあげられた時の反応であったり、ほわっとした色っぽさがたまらなかったです。権太の惚れる小せんでした。だからこそすし屋の姿が泣けて泣けて。
義太夫狂言でよく「じゃらじゃら」という言葉が出てきますけれども、じゃらじゃらのニュアンスというのはああいうことなんだろうなという感覚が随所にありました。もう二度と拝見できないということを、受け入れることができません。
お声やお姿がつぎつぎに浮かんで頭を離れません。とにかく秀太郎さんの芝居を拝見できたことは生涯の幸せです。ありがとうございました。どうぞ安らかに。