歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎座 九月大歌舞伎 第三部 東海道四谷怪談を見てきました!2021年9月

またしても首都圏の緊急事態宣言が延長されるようですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

現在新規感染者は減少傾向と言われているものの、まだまだ油断はできない状況のようですね。歌舞伎界の感染状況も心配です。みなさまもどうぞお気をつけてお過ごしくださいませ。

このすえひろはといえば、二回目のワクチンの副反応のつらさと異物混入騒動でどうなることかと思いましたが、おかげさまで現在は健康に過ごしております。今後も感染対策には十分注意してまいります。

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして九月大歌舞伎の第三部を拝見してまいりました!備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

玉三郎さんのお岩のすさまじさ

第三部は「東海道四谷怪談」。民谷伊右衛門に仁左衛門さん、お岩・お花に玉三郎さん、小仏小平・佐藤与茂七に橋之助さん、按摩宅悦に松之助さん、直助権兵衛に松緑さん、お梅に千之助さんという配役でした。

仁左衛門さんの伊右衛門と玉三郎さんのお岩による「東海道四谷怪談」が前回上演されたのは1983年、実に38年ぶりの上演とあって、たいへん貴重な機会です。

 

生まれる前の出来事でしたのでもちろん見る術はなく、このすえひろも大変楽しみにしておりました…!今年は現実感がないほど素晴らしい上演が続いていますね…とにかくものすごい一年だなと震えています。。夢のようで本当にありがたいことです…!

今回はコロナ禍ということもあってか、四谷町伊右衛門浪宅の場から本所砂村隠亡堀の場までの上演です。上演時間のペース配分が1時間半・20分という具合だったため急に現実世界に戻されたようで、うあああ続きが見たいいいいと頭をかきむしりたい思いでした。

 

上演中は劇場中の空気がずっしりと体にのしかかってくるようなとにかく濃密な時間でした…。本当に怖かったです。玉三郎さんのお岩の見た目が怖いなどという直接的な怖さではなくて、あらゆる方向から尊厳を踏みにじられたお岩の痛みと絶望が我が身に迫ってきて、もういたたまれなくなったうえでの恐ろしさでした。ものすごい芝居でした。

自分も前回別の配役で拝見した時から年齢を重ねて感じ方が変わってきたのかなと思います。そんなタイミングで玉三郎さんのお岩を拝見でき本当に幸運でした。

 

仁左衛門さんの伊右衛門はもう本当にいい意味で最低でした…。ひどいのにカッコいい、ひどカッコいい、これが色悪か…!という。

お岩さんの体調をちょっと気遣うようなそぶりを見せながらも虐げ、都合のいい話が来たら簡単にそちらへ流れる軽薄さ、ふざけるなと言いたい行いですがそれでいてもうとにかく色っぽいのですよね。たまらないですね…。

 

それにしても伊藤家の人々は何を考えているのかなと思います。伊右衛門も伊右衛門なのですが伊藤家も一体どうなってるのかと怒りながら見ていました。観客がお岩さんサイドに立ってしまう視点が巧みに作られているのでしょうか。南北先生はさすがです。

余談ですが小仏小平がリンチされるシーンで指を一本一本折られるというリアリティのある痛みの描写が凄惨で、ホラー映画を見たようなダメージがありました…。あれは痛いです。

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