歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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国立劇場 10月歌舞伎公演 『伊勢音頭恋寝刃』を見てきました!2021年10月

つい先日の暑さが嘘のように急に涼しくなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。なんだか例年の10月がどのような陽気であったのか忘れかけております…。いろいろと変化の激しい世の中ですね。

このすえひろはといえば、この陽気で寒暖差アレルギーの予感がしております。このご時世、外でくしゃみをすることに緊張してしまうので、なんとか食い止めたいところです。

さて先日のお話ですが、国立劇場へ出かけまして10月歌舞伎公演『伊勢音頭恋寝刃』を拝見してまいりました!備忘録として少しばかり感想をしたためたいと思います。

ロビーに名刀「葵下坂」

10月の歌舞伎公演は「伊勢音頭恋寝刃」。実際の殺人事件「古市十人斬り」に取材した人気演目です。

梅玉さんの福岡貢に梅枝さんのお紺、時蔵さんの万野、又五郎さんの喜助、歌昇さんのお鹿という配役でした。今回は伊勢街道相の山の場から通しでの上演ということで、扇雀さんの万次郎、莟玉さんのお岸、萬太郎さんの奴林平も重要人物です。万次郎のいい意味で一人では何もできない感じがたまらなかったですね。

梅玉さんの福岡貢の素晴らしさは言わずもがな、相対する梅枝さんのお紺の憂いのある美しさにハッとしました。そして時蔵さんの万野の意地悪さととぼけ感たるや。

万野が登場しただけでも、この人が君臨している油屋の職場環境の悪さが想像できるようでした。ただ女性陣が並んでいるさまから漂うムードの悪さ、もう私なら早々に退職したい職場です。伊勢音頭の油屋として素晴らしい空気感でした。

 

通し狂言で拝見しますとドタバタ感のある場面にたっぷり時間がとられており全体的にのんびりとしていて、楽しいムードのなか伊勢の名所の風景で観客を楽しませる意図もあったのかなあなどと思いました。

今回残念だったのは奥庭の場で音頭の踊りがなかったことです。あのシーンを想像以上に楽しみにしていた自分に気づきました。旅情を感じていたようです。

 

そして、注目の名刀「葵下坂」のロビー展示もしっかり拝見してまいりました!妖刀青江下坂のモデルとされる刀です。

もちろん本物の葵下坂は妖刀ではないはずですが、ロビーにぽつりと置かれていたので、この社会不安のなか乱入者が現れ、ガラスをぶち割ってこれを手にしてしまったらどうしよう…と想像してドキドキハラハラしました。

葵下坂の名のとおり葵の紋がくっきりと刻まれていて、鏡のように自分の顔が映るほど輝いていました…。不勉強で刀の見方などはまったくわかりませんで、さぞかし切れるのだろうなあ、と思うばかりです。

芝居の重要アイテムである、刀の折紙というものの実物も拝見できて興奮しました。確かにこれは結構簡単に捏造できてしまうのだろうなと思われました。実際はインチキ名刀騒ぎなどもたくさんあったのでしょうね。「太刀盗人」のような出来事も横行していそうです。

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