近ごろは、小さなものから大きなものまでとにかく地震が頻発している心配な日々が続いていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
このすえひろはといえば、ご近所に吉右衛門さんの死を悲しんでいる方がおいでであることを偶然に知り、しんみりしています。それでお互いの胸の悲しみが増えたり減ったりすることはないのですが、間接的にでも気持ちを分かち合えることで、少し心が温かくなるように思います。私のブログもどなたかにとってそうであると嬉しいです。
さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして十二月大歌舞伎の第一部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためたいと思います。
ねずみに釘付けに
第一部は「三代猿之助四十八撰の内 新版 伊達の十役」です。
猿之助さんが乳母政岡や仁木弾正など十役を早替わりでお勤めになり、巳之助さんの八汐、中車さんの栄御前、市川右近さんの千松という配役でした。
序幕はいわゆる伊達騒動の奥殿・床下、大詰は「間書東路不器用(ちょっとがきあずまのふつつか)」と題した舞踊劇です。エンタメ性の高い味わいかなと思っていましたが、古典の演目の重みも感じられたように思います。
猿之助さんの十役早替わりは想像の通りの鮮やかさで、目の離せない楽しさでした。それでもなんといってもやはり政岡の強さが一番沁みました。型については私のような素人の感想ではなくきちんとした評をお読みいただきたいところですが、私の目には母性より先に確固たる忠義が感じられて、そこがいいなあと思いました。
巳之助さんの八汐はすらりとしてお綺麗で恐ろしかったです。何かを懲らしめるときなど「これでもかこれでもか」という言い方がありますが、もしかしてあれは八汐からきたのでしょうか。調べていないのでちょっと今はわかりませんけれどもどうなのでしょう。気になるところです。
ねずみが玉太郎さんと発表されていたのでなんだかずっとねずみに釘づけになってしまい、大詰で「けだもの」と書かれた直球な衣装をお召しになって現れたときには妙に高揚してしまいました。