ただいま京都は祇園四条で上演されている
京の年中行事 當る寅歳
吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎
第二部「三人吉三巴白浪」は、数ある演目の中でも屈指の名作として知られる演目です。今回は孝太郎さん・隼人さん・芝翫さんという配役で、秀太郎さんのお弟子さんのりき彌さんが名題に昇進される記念の上演でもあります。江戸が舞台の演目を、暮れの京都で見るというのも味なものではないかと思います。
この演目について過去にお話したものがありますので、ひとつまとめてみます。今回初めてご覧になる方にとって、何らかのお役に立てれば幸いです。
三人吉三巴白浪とは
三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)は、1860年(安政7年)の1月に江戸は市村座にて初演されたお芝居。
幕末の名作者・河竹黙阿弥が二代目河竹新七の時代に作られたもので、江戸時代の現代ドラマである「世話物」と呼ばれるジャンルの名作として知られています。歌舞伎屈指の名台詞と、独特の退廃的な色気や焦燥感が魅力的な物語です。
主人公は、三人の吉三郎。それぞれ和尚吉三・お坊吉三・お嬢吉三と呼ばれています。三人はある節分の夜に偶然巡り合い、おまけに揃って盗賊で、義兄弟の契りを交わします。ところがそこからぐるぐると因果が巡り、狂いゆく運命に翻弄されていくのでした。
全体のあらすじ
今回は発端の「大川端庚申塚の場」のみの上演です。こちらはわずか30分ほどの上演ですが、実はそのあとに展開していく物語が非常にドラマチックですので、ご興味をお持ちでしたらお読みいただければと思います。
演目のモチーフ
「三人吉三」のおもしろさのひとつが、当時の民間信仰や通俗的な存在を巧みにモチーフとして取り入れている点かと思います。
特に、今月上演の大川端庚申塚の場にかかわる「庚申」については、知ってからより演目がおもしろく感じられた情報でしたので、お話したいなと思いました。
お嬢吉三のモチーフになっている「八百屋お七」も、歌舞伎や浄瑠璃ではお馴染みの女性ですのでご紹介いたします。
ゆかりの地
三人吉三巴白浪はロケーションが魅力的な演目で、幕末の下町にはこんな人たちが本当にいたのではないかと思わせるようなリアリティがあります。
ゆかりの地が都内の狭いエリアに集中しており、数時間でササッとめぐることができます。顔見世をご覧になるのは関西圏の方も多いと思いますが、東京にいらした際にはぜひお出かけくださいませ。