歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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コクーン歌舞伎 第十八弾『天日坊』を見てきました!2022年

早くもバレンタインが近づいておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?今年のバレンタインはなんとなく静かなように思います。

このすえひろはといえば今日一日、今夜放送の「鬼滅の刃遊郭編」の最終回を心して待機しておりました。もう一つ先のブロックまで放送があるのかな?と思っておりましたので寂しいです…。

遊郭編は原作でも特に好きで、「いつの日か鬼滅の刃が歌舞伎化された暁には、妓夫太郎と堕姫の兄弟を勘九郎さんと七之助さんの配役にて必ず見たい」と周囲に言って回っております。素晴らしい芝居になると思うのです。こうしてワールドワイドウェブにも残しておき、実現を念じたいと思います。

さて、先日のお話ですが、渋谷のbunkamuraへ出かけましてコクーン歌舞伎 第十八弾「天日坊」を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。楽しみにしていらっしゃる方も大勢おいでのことと思いますので、芝居や演出の内容については詳細には記しません。ご了承ください。

俺は、誰だあっ!

コクーン歌舞伎 第十八弾「天日坊」は、宮藤官九郎さん脚本による作品。演出・美術は串田和美さんです。幕末期以来上演の絶えていた河竹黙阿弥の隠れた名作が、宮藤官九郎さんの脚本によって蘇るという熱い作品で、2012年に上演されて話題となりました。

このすえひろは前回上演の際に不覚にも見逃しまして、数年来の後悔、再演に狂喜いたしました…!昨年の桜姫に続き、つらくとも生きてさえいれば必ずいいことは起こるらしいと確信しつつあります。

 

「天日坊」はみなしごして生きてきた男が、出世の種を見つけたことから虚飾を塗り固めて堕ちていき、思わぬ因果の糸にからめとられていく物語です。初回で内容を追うのに必死になってしまい、もう一度拝見したいところでした。

影のある役どころの勘九郎さんの色っぽさはたまらないものがあります…。純朴なみなしごに魔が差し堕ちていく瞬間の表情、魅力的でぞくぞくいたしました。

 

文明の利器を駆使すれば誰でもインスタントな立身出世が叶うと思わされている、裏ではその願いを絡めとる悪い人々も跋扈している。そんな世の中を生きる2022年の自分には、天日坊の「俺は誰だ」という叫びが胸に刺さりました。こうして本名とは別の名で文章をしたためている私もまた、一体誰なんでしょうか。よくわからないです。

幕末以来上演が絶えていたという点についても、なんだかわかるなあと感じました。河竹黙阿弥の要素がどこまで残っているのかわかりませんが。「俺」圧が強そうな江戸の役者には、なんだか演じにくい役だったのではないのかなと思います。

人々がこれまでにないほど多くの顔を持つようになって、ようやく染み入るようになったのではないでしょうか。黙阿弥先生の先見の明はさすがです。

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