今日は世の中はホワイトデーですね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
3月14日と聞いてホワイトデーの前にまず頭によぎるのは、仁左衛門さんのお誕生日です!おめでとうございます!!
78歳になられたとのこと大変喜ばしく、このすえひろも今朝から家族に何度も触れ回っております。1年365日あるなかで、ホワイトデーという日にお生まれになるという素敵さがたまりません…。お誕生日まで素敵とは…。
仁左衛門さんは現在体調不良により三月大歌舞伎を休演なさっていて、その後どうなさったかが気がかりでなりません。どうかご無理なさらずこの機会にゆっくりお休みいただきたい、しかし大事なくご無事という何らかの情報はどうにかして得たい、という葛藤の日々です。
会社員時代にデスクに置いて癒しとしていた「お祭り」の舞台写真を、今は部屋の窓辺に飾っています。休演からのご復帰でお勤めになっていた「お祭り」のお元気な仁左衛門さんのお姿を思い浮かべながら、毎日ご無事を願っております。
さて先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして三月大歌舞伎の第三部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。
幸四郎さんの石川五右衛門
第三部は「信州川中島合戦 輝虎配膳」「増補双級巴 石川五右衛門」という狂言立てです。
「信州川中島合戦 輝虎配膳」は、芝翫さんの長尾輝虎、魁春さんの越路、雀右衛門さんのお勝、孝太郎さんの唐衣、幸四郎さんの直江山城守という配役です。
雀右衛門さん、魁春さん、孝太郎さんそれぞれの濃い味わいが一度に堪能できる、お得感のある一幕でした。立女形が3人並ぶと迫力があってとてもカッコいいですね。底知れない魁春さんの越路と、健気でやわらかな雀右衛門さんのお勝のようすが味わい深かったです。雀右衛門さんのお役からは生身の人間を感じて、いつも感情移入させられます。
こんなことを申してはお叱りを受けるかもしれませんが、輝虎配膳は妙にツボに入ってしまう演目で、今回も楽しく拝見しました。とにかくきらびやかな空間で、すべての出来事が儀式のように大げさに展開していき、登場人物がそれぞれ独特の感情表現をして、いきなり歌いながら琴を演奏したりする、こういった奇天烈なおもしろさはクセになるなあと思います。
続く「石川五右衛門」は、吉右衛門さんの当たり役を甥の幸四郎さんがお勤めになる注目の舞台です。宙乗りでの葛籠抜けも思い出深く、幸四郎さんのお勤めで拝見できることを嬉しく思いました。幸四郎さんの五右衛門、錦之助さんの此下久吉という配役です。鷹之資さんと玉太郎さんの並びにテンションが上がり調べたところ、お二人がもう一般的には就職活動のお年頃になられたと気づき、驚き入りました。
舞台が楼門へと移り浅葱幕の前での大薩摩。演奏が白熱していくに従い、一年前の吉右衛門さんの舞台がよみがえってきました。この幕が降ろされたら、吉右衛門さんがそこにいるような気がしてきたのです。
しかし頭ではわかっていますから、吉右衛門さんがいないことを突きつけられるようで、舞台を見るのが怖いような、苦しいような思いがしました。一年前に戻りたいな、としょげてしまいましたが、現れた幸四郎さんの五右衛門にはセリフ回しの端々に吉右衛門さんの気配があり、胸がいっぱいになりました。
そういえば、思い出したことが。四階の幕見席から吉右衛門さんの五右衛門を拝見していた時のことです。大道具がせり上がると五右衛門の姿が全く見えなくなるため、いつも座席で限界まで体をのけぞらせて、立ち見の場合は腰をこごめて、オペラグラスで必死に見ていたのでした。
そんなことをしても四階から五右衛門は見えないのですが、足元だけは少し見えるのですよね。その足さばきのカッコよさ、いかにも天下の大泥棒という大きさ、たまらないものがありました。足元だけであれほどワクワクできる五右衛門。大切な思い出です。
昨日お話した菊之助さんの盛綱といい、幸四郎さんの五右衛門といい、お二人の吉右衛門さんへの思いがひしひしと伝わってきました。
寂しいことに変わりはありませんが、目の前の舞台をひとつひとつ希望を持って拝見していきたいです。将来、お二人の芸がいっそう重みを増し、どっぷりその中に浸るような体験ができる日が必ず来ると信じています。お二人と同じ時代を生き年齢を重ねて行けることを幸せに思います。