歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎座 四月大歌舞伎 第三部 ぢいさんばあさん・お祭りを見てきました!2022年

各地で地震が続いていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。何卒お気をつけくださいませ。

このすえひろといえば、とっさに身を守ろうとして足の指をガツンと打ってしまい、今も少し痛いです。大きな災害に遭遇したら、大きなことから小さなことまで想定外のことが山ほど起こるのだろうなあと不安に思いました。災害時には小さな怪我も命取りになりかねませんので、慌てず落ち着いて行動するよう心掛けたいと思います。

さて先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして四月大歌舞伎の第三部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

とにかく生きていてよかったです

第三部は「ぢいさんばあさん」「お祭り」という大変贅沢な狂言立てです。

ぢいさんばあさん」は、仁左衛門さんの美濃部伊織に玉三郎さんのるん、歌六さんの下嶋、隼人さんの久右衛門、橋之助さんの久弥、三之助さんのきくという配役。この演目での仁左衛門さんと玉三郎さんのご共演は2010年以来、実に12年ぶりということです。このすえひろも大好きな演目でして、素晴らしすぎて言葉になりません。ひたすらにラブラブで可愛らしいというだけでももう心が飽和状態なのに、そのうえで人生のよろこび悲しみに思いを馳せるという、感情大爆発の時間でした。

 

2010年のお二人の芝居を拝見して大変感動し、その後別の配役で何度か拝見してはおりましたが、やはり自分自身にとってのオリジナルの舞台というのは格別なものがあります。

大学生の頃に見た舞台と、12年の時を経て自分なりに様々な経験を積んでから見た舞台とでは、二人の抱える悲しみと幸せの感じ方が全く違いました。自分の世界が深まっていくような体験でした。どちらも仁左衛門さんと玉三郎さんのご共演で味わうことができたというのは、なんてしあわせなことなのだろうとつくづく思いました。ありがたいことです。生きていてよかったです。

 

そういえば、仁左衛門さんの伊織の印象に残ったシーンをメモしておきたいと思います。

京都で仲間たちとの宴を楽しんでいる伊織が、江戸のるんから送られてきた桜の花びらを散らす場面でのことです。全ての花びらをふわっと散らしたあと、みんなからは見えないように扇でさりげなく数枚を拾って、大切そうに紙でくるんで懐にしまっていたのですね。それが台本にあるお約束というようには見えない、ごくごく自然な仕草で、るんへの思いをしみじみと感じる素晴らしいシーンでした。

他の方の伊織でも同じようになさっていたのかは確認しておらずわかりませんが、仁左衛門さんのお芝居のこういった細部の仕草がたまらなく好きです。

 

続く「お祭り」は、玉三郎さんの芸者に、福之助さんと歌之助さんの若い者という配役です。通常はカッコよく若い者をあしらうほろ酔いの鳶頭と粋な芸者さんのカップルという形式ですが、今回は芸者さんと若い者という珍しい舞台です。

年老いたるんから美しい芸者への変貌が鮮やかで心の底からうっとり、まるで夢のようでした。お約束の「待っていたとはありがたい」を玉三郎さんのお声で聞くことができたことにも興奮しました!貴重ですよね。

福之助さんと歌之助さんは玉三郎さんの特別舞踊公演に度々ご出演ということもあってか、大きな舞台でも堂々とお勤めでした。拝見したのは初日間もないころでしたので、今後さらにご成長なさるものと思います。特に福之助さんの脚の筋肉には驚きまして、いつも力みなく踊られているのはこの筋肉の支えあってのものかと納得しました。今後のご活躍が大変楽しみです。

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