不安定な陽気が続いていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
このすえひろはといえば、現代的なサービス「レンタル家具」なるもので、天井に突っ張るタイプの大きな本棚を試しにお借りしてみました。圧迫感があるかなと思いましたが、背板のないタイプを選んだためか意外とスッキリしています。
図書館のように歌舞伎や江戸の本だけをまとめて並べてみたところ、タイトルを読んでいるだけでもワクワクできる部屋になりました。ついつい並べただけで満足してしまいましたが積読の本も多数含まれているので、追って読んでいかねばと思います。
さて先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして團菊祭大歌舞伎の第一部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。
雀右衛門さんの雪姫に夢中
第一部は「祇園祭礼信仰記 金閣寺」「あやめ浴衣」という狂言立てです。
「祇園祭礼信仰記 金閣寺」は、桜舞い散る春の金閣寺を舞台とした時代物の名作です。主な配役は雀右衛門さんの雪姫、松緑さんの松永大膳、愛之助さんの真柴久吉、吉弥さんの直信、左近さんの松永鬼藤太、福助さんの慶寿院尼というものでした。おもしろかったです…!
福助さんは御病気からの復帰の際にも慶寿院尼をお勤めになっていたと思いますが、その頃よりもお健やかなようにお見受けしてうれしくなり、またその存在感に圧倒されました。大きな動きもなく、数分の御出演でも、慶寿院の存在の重さを感じさせる芸の力というのはすごいものだと思います。
今回の金閣寺は、もうとにかく雀右衛門さんの雪姫に夢中になりました!襲名披露の際にもお勤めになっていた雪姫、今回の方が数年分お年を召されたはずなのに、前回よりも可憐に見えました。さらには芯の強さもあり、すっかり魅了されてしまいました。
つらい悲しい、そうだ絵を描こう、ねずみが助けてくれた、さあ夫を助けに行こう…という段取りの消化ではなくて、葛藤する雪姫の背景に夫直信だけでなく雪村、はては雪舟の存在までもが見えてくるような体験でした。赤姫でありながら直信の妻でもある雪姫は、恋の激情にだけ動かされる女性ではないのだと腑に落ちたと申しますか。
金閣寺は何度となく拝見してきた演目なのに、全体の展開の妙や仕掛けのおもしろさにも今回初めて気が付きまして、少しも観客を飽きさせないように構成されていているのだなあとわかりました。
雀右衛門さんの雪姫をじっくりと味わいたくて、舞台にずっと集中できたためだと思います。おもしろさのわからなかった演目でも、こういった発見をすると次回以降はどんどんおもしろくなり、夢中になっていくのが楽しいです。
続く「あやめ浴衣」は、初夏の風物詩を描いた爽やかな舞踊。魁春さんの芸者、新悟さんのあやめ売り、鷹之資さんの船頭、歌之助さんの水売り、玉太郎さんの町娘という配役でした。
あやめを手に取る新悟さんの美しさ、さながら浮世絵の美人画のようで、うっとりと見入ってしまいました。重いドラマも良いですが、こういった小さな季節の舞踊もとても素敵ですね。実際はうだるような湿気の日でしたが、劇場中が清涼感で満ち溢れ、サッパリとした気持ちで歌舞伎座を後にすることができました。