初夏の陽気ですね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
このすえひろはといえば、梅雨に備えて広がりゆく毛量を減らしてまいりました。毎年この季節は滝夜叉姫さながらになってしまいます。今年は美容師さんのおかげでスッキリと夏を迎えられそうです。
今日から6月ですけれども、もう少し先月の團菊祭に関係するお話をさせてください。
国会図書館デジタルコレクションにて「土蜘」初演時の浮世絵を発見して興奮しましたので、ぜひご紹介したいと思いました。
楊洲周延 明治14年新富座「土蜘」
幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・揚州周延が手掛けた役者絵。明治14年6月新富座「夜討曽我狩場曙」の中幕「土蜘」のようすを描いています。
配役は五代目菊五郎の土蜘の精、九代目團十郎の兵卒軍内、初代左團次の平井保昌、八代目半四郎の芸妓小半、四代目芝翫の供奴駒平というものです。九代目團十郎は面長を強調して描かれていることが多いのですが、割とイケメンに描かれていますね。
興味深いのが、隈取が茶色に見えないという点です。
色が退色して青みがかったグレーに見えているのか、なんらかのルールがあって浮世絵状はこのように色指定をしているのか、良いお顔を強調するためなのかわかりませんが、当初は代赭隈ではなかった可能性もありそうです。
衣装も全体的に現在の物とは違いますし、芸妓小半、供奴駒平、兵卒軍内という現行の上演にはみられない役どころをメインの役者が演じていたらしいということもわかります。
初演時の台本の情報が手元になく確かめられませんが、現在よりもややポップな印象の舞台であった可能性もありそうです。金剛流の金剛唯一に協力を仰いだという情報から、もっと堅い印象の舞台を勝手に想像していました。当時と現在では価値観が違いますので堅さのニュアンスを一概に比べることはできませんが、興味深い一枚です。