歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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【来たる14日】歌舞伎座・秀山祭九月大歌舞伎 チケット一般発売!

来たる14日(日)は9月の歌舞伎座公演

二世 中村吉右衛門一周忌追善 秀山祭九月大歌舞伎のチケット一般発売日です!

初代吉右衛門の芸を顕彰するため、これまで毎年九月に開催されていた「秀山祭」。古典の名作演目が揃う興行でもありますので、初めての方にこそお勧めしたい公演です!難しいのではないかと不安を感じられる方もおいでのこととと思いますが、数百年にわたり重ねて上演されている演目には理屈抜きの魅力があるはずです。

今回は二世中村吉右衛門一周忌追善と冠し、昨年亡くなられた吉右衛門さんの追善として上演されます。追善という文言とともに並ぶお名前を拝見しますと、ご不在がいよいよ現実感を増して胸に迫ります。ゆかりの方々による熱演を心して拝見したいと思います。

公演の詳細

www.kabuki-bito.jp

一般発売日

8月14日(日)10:00~

【チケットWeb松竹】

会期・上演時間

2022年9月4日(日)~27日(火)

第一部 11:00~
第二部 14:40~
第三部 17:45~

休演日:12日(月)、21(水)

チケット料金

一等席        16,000円
二等席   12,000円
3階A席      5,500円
3階B席      3,500円
1階桟敷席  17,000円

八月納涼歌舞伎から花道の横以外のすべての座席が販売されています!九月も引き続き客席がにぎわうことを願っています。

歌舞伎座の感染対策

歌舞伎座では、かなり徹底した感染対策が取られています。これまでお馴染みであった幕間の食事や大向こうは今も禁止で、幕見席も再開されていません。しかし「めでたい焼き」の予約販売や、3階席の花篭食堂は再開しています。

特に重要と思われる対策は下記の2点です。

①ロビーや客席では会話を控えることが推奨されています。

②整理退場への協力が求められています。

会話を控えるのはもちろん、整理退場も出入口での密集を避けるための大切な施策ですので、ご自身の身を守るためにもぜひご注意ください。

歌舞伎座の感染対策はこれまで非常に厳格に守られ、我々観客の健康をしっかりと守っていただいてきましたから、今後も提示のとおりに取り組んでまいりましょう。

おすすめのポイント

九月の歌舞伎座は、初代吉右衛門の芸を顕彰する秀山祭。今回は昨年亡くなられた吉右衛門さんの追善として上演されます。

ゆかりの方々が揃い、吉右衛門さんが松貫四のお名前で手掛けられた演目もあり、たまらないものがあります。どの部にも名作演目が並んでいますので、初めての方にもぜひにとお勧めしたい公演です。各部の内容をごく簡単にご紹介いたします。

 

第一部は吉右衛門さんが松貫四のお名前で構成・演出を手掛けられた「白鷺城異聞」と、最も上演回数の多い古典の名作中の名作「菅原伝授手習鑑 寺子屋」の二本立て。「白鷺城異聞」は吉右衛門さんがかつて姫路城でお勤めになった、宮本武蔵の妖怪退治伝説を題材とした演目です。今回は歌六さんが主役の宮本武蔵をお勤めになり、又五郎さんや歌女之丞さんといったお馴染みの方々がそろい踏みです。

菅原伝授手習鑑 寺子屋」は,、大恩人の恩に報いるために我が子を犠牲にするという悲劇の物語です。義太夫の名文と、数々の名優によって練り上げられた芝居によって深い感動を呼び起こす名作中の名作として知られています。今回は主役の松王丸を、松緑さん(偶数日)と幸四郎さん(奇数日)がダブルキャストでお勤めになります。

特筆すべきは、又五郎さんが涎くり与太郎をお勤めになるという点です!寺子屋はその名の通り江戸時代の学び舎が舞台なのですが、涎くり与太郎はクラスの困ったガキ大将というような面白い役どころです。今回のような特別な興行では、ベテランの役者さんがお勤めになることがあります。このすえひろも非常に楽しみにしております。

 

第二部は吉右衛門家の芸であり吉右衛門さんが大変チャーミングにお勤めになっていた「松浦の太鼓」と、吉右衛門さんの当たり役の名場面の数々を盛り込んだ「揚羽蝶繍姿」の二本立てです。

松浦の太鼓」は忠臣蔵の討ち入りを題材とした演目で、吉良上野介屋敷のご近所に住む風流人の松浦候が、今や遅しと討ち入りを待ちわびているお話です。今回は吉右衛門さんの実兄の白鸚さんが松浦候をお勤めになります。

揚羽蝶繍姿」についてはまだ詳しい内容がわかりませんが、籠釣瓶花街酔醒、鈴ヶ森、熊谷陣屋といった名場面のオムニバス的な演目なのではないかと想像しています。吉右衛門さんの実の甥の幸四郎さんを中心に、ゆかりの方々が並んでいます。御病気からのリハビリを重ねられている福助さんが思い出深い役どころをお勤めになるのも胸が熱くなります。

 

第三部は、吉右衛門さん倒れられる数か月前にお勤めになっていた「仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」と松貫四のお名前で手掛けられた「昇龍哀別瀬戸内 藤戸」の二本立てです。

仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」は、いわゆる忠臣蔵の大石内蔵助(大星由良之助)が、祇園で遊興にふけっていると見せかけながら敵討ちの機会を窺っているさまを描いた名場面です。ここに、ある兄妹の運命がドラマチックに絡んでいきます。全体的にスリリングでありながら、ユーモラスな要素も盛り込まれたおもしろい演目です。

今回は主役の大星由良之助を仁左衛門さんが、そして兄妹の兄・寺岡平右衛門を海老蔵さんが、妹おかると雀右衛門さんがお勤めになります。海老蔵さんが海老蔵のお名前で歌舞伎座の舞台に立たれるのはこれが最後ですので、そういった意味でも必見です。

昇龍哀別瀬戸内 藤戸」は、吉右衛門さんが厳島神社に奉納されたゆかりの舞踊劇です。今回は義理の息子にあたる菊之助さんがお勤めになります。能を題材とした厳かな舞踊で打ち出しとなります。

 

今回は本当にどの部も絶対におすすめしたい内容ですが、初めてご覧になることを前提として考えるならば第三部かなと思います。「祇園一力茶屋の場」は、数百年にわたり大人気演目として上演されてきた名場面であり、今回は仁左衛門さんがお勤めになるということもありますので、古典の重みを存分に堪能できるのではないかと思います。

上演機会も多いため、今回仁左衛門さんの舞台をご覧になれば、また別の配役でご覧になったときに、味わいの違いや演出の違い、役者さんそれぞれにお持ちになっている魅力の違いなどが味わえるはずです。

大星由良之助(大石内蔵助)とは一体どういった男なのか、歌舞伎役者の方々が生涯をかけて取り組まれる芝居を、同時代を生きて堪能できる喜びを噛みしめたいですね。

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