本日1日、東京の国立劇場にて令和4年10月歌舞伎公演の幕が開きましたね!おめでとうございます!
今月の演目は『通し狂言 義経千本桜』。義経千本桜の各場面の主役 新中納言知盛・いがみの権太・狐忠信の3役を、菊之助さんがお一人でお勤めになるという記念すべき公演です。
2020年3月に小劇場での上演が予定されながらもすべて中止となり、残念な思いをなさった方も大勢いらしたことと思います。コロナの影響だけでなく、小劇場での上演のためチケット難でもありましたよね。今回は上演規模がぐっと大きくなり、うれしい限りです!無事に千穐楽まで全日程で上演が続くよう切に願っております!
義経千本桜の3つの世界
今回の公演は、歌舞伎を初めてご覧になる方にもぜひにとおすすめしたい内容です。等級によってはまだチケットが購入可能ですのでお早めにチェックなさってみてください!
上演される「義経千本桜」は、数ある古典歌舞伎の演目の中でも特に名作として知られるものです。壇ノ浦で滅ぼされたはずの平家の武将たちが、実は生きていたという驚きの設定。そのうえで、平家を滅ぼした源義経への復讐をもくろむ平家の武将たちと周辺人物の間に、普遍的な悲劇が展開していきます。
物語は大きく3つのブロックに分かれていて、それぞれに主役がいます。今回の『通し狂言 義経千本桜』はA・B・Cプロに分けての上演です。
Aプロ(主役…知盛):鳥居前・渡海屋・大物浦
Bプロ(主役…権太):すし屋
Cプロ(主役…忠信):道行初音旅・河連法眼館の場
義経千本桜と言いながら、主役は義経でないところもおもしろいポイントですね。
初めてご覧になる方のためにそれぞれの場面をごく簡単にご紹介しますと…
A:「平知盛は実は生きていた」悲壮感あふれるさむらいの死にざまのお話
B:「平維盛は実は生きていた」江戸っぽい香りのする町人の家庭のお話
C: 義経&静御前の秘宝「初音の鼓」ゆかりの狐のファンタジックなお話
それぞれの場面の主役となる知盛・権太・狐忠信は、武士・町人・動物という身分の全く違う役どころです。これらは全て立役の方にとって、大変重要なものと言われています。菊之助さんはこの3つの演じ分けに一人で挑まれるというわけです。
近ごろの菊之助さんは、見た目の麗しさと肉体の若さに、鍛錬の成熟度合いがマッチしたとても魅力あふれる時期かと思います。古典の伝承への気迫も感じられ、御子息もそれにしっかりと応えていらっしゃいます。歌舞伎の未来の明るさを感じさせてくださる貴重な方です。
どの場面も素晴らしい舞台を見せてくださると思いますが、初めてご覧になる方にどれかひとつを挙げるなら、Cプロをおすすめしたいなと思います!
Cプロは3つの場面のなかで一番かわいいというのが決め手です。感動、涙も良いのですが、「かわいい」にはあらゆるものを凌駕する力がありますよね。菊之助さんの狐はかわいいにもほどがあると思いますので、沼落ち力が高いと思われます。ぜひ味わってみてくださいませ。