歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 八代目 市川新之助初舞台 十二月大歌舞伎 夜の部を見てきました!2022年

強い寒波が到来しているそうですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。ヒートショックにお気をつけて、あたたかくしてお過ごしくださいませ。

このすえひろはといえば、週末の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の最終回とM1グランプリに向けて戦々恐々としております…一体どんな結末が待っているのでしょうか。どちらもリアルタイムで拝見したいのですが、どちらかを録画にせざるを得ません。悩ましいところです。

 

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 八代目 市川新之助初舞台 十二月大歌舞伎の夜の部を拝見してまいりました!備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

また当代の名跡のうち「白猿」という部分についてどのように使われるのか、メディアによってまだまちまちのようですので、このブログでは團十郎と表記いたします。何卒ご了承くださいませ。

玉三郎さんの揚巻に感激

夜の部は「口上」「團十郎娘」「歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜」という狂言立てです。

口上」は、少人数のベテラン勢という昨月の趣向とはがらりと変わり、ご一門と親戚筋の方々がズラリと3列に列座された迫力のあるものでした。まさに「柿色裃勢揃い」です。先月のような思い出のエピソードや、叱咤激励というものはそんなに多くはなく、独特の緊迫感があったように思います。

一階から拝見していたためどこにどなたがいらっしゃるのか把握しきれませんでしたが、髷が鉞の方、そうでない方さまざまで、興味深く拝見しました。

 

團十郎娘」は、いわゆる近江のお兼と呼ばれている、パワフルな女の子が長い晒布を美しく翻して踊る舞踊であります。今回は團十郎さんのご長女・ぼたんさんが近江のお兼をお勤めになりました。漁師としてご共演になったのは右團次さんや男女蔵さん、中村福之助さん、種之助さん、男寅さん、鶴松さんです。

立派な男ぶりの方々の中での踊りだったわけですが、少女であるはずのぼたんさんが小さく見えず、歌舞伎座という大空間において堂々たる踊りを披露されていました。おいくつでしたっけ…と本当に驚いてしまいました…すごすぎませんか。。

それでいて大人びすぎて嫌味になるのではなくて、可憐さと可愛らしさが溢れていて。晒のさばきも見事で、大人でも難しいものをどれほどお稽古されてきたんだろうと胸が熱くなりました。いろいろな受け止め方があるのももっともではありますが、これは本当に今しか見られない舞台ですから、拝見できてよかったです。今後の舞踊家としてのご活躍が本当に楽しみになりました。

 

歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜」は、團十郎さんの襲名披露狂言として選出されている一幕です。昨月に続いての助六、配役を変えての上演です。

助六は本当に出演者の多い演目ですから、歌舞伎役者がズラリと並んでいる豪勢なさまを見ているだけで無条件にワクワクします。見るたびに自分は歌舞伎がとにかく好きなんだなあと実感する演目です。

拝見するたびにご存命の方で團十郎さんほど助六が似合う方はいないよなあと思い、それだけでも2022年に歌舞伎ファンでいられたことを幸運に思います。

 

私が拝見した日は、玉三郎さんが揚巻をお勤めでした。自分の人生では生で拝見できることはないだろうと思っていたので本当にうれしく、生きていてよかったです。

自分がこれまでの観劇体験の中からイメージを作り上げてきた揚巻そのものが目の前にいるような感覚で、高揚感を押さえられませんでした。パラレルワールドに飛びそう、と申しますか。ここは歌舞伎座ではなくて吉原仲之町の夜なんだ、絢爛豪華な裏に底知れぬ悲しみのある吉原仲之町なんだと、舞台の世界のなかに吸い込まれていくようなものすごい体験でした。。お声が今もずっと脳内にリフレインし続けています…。ちょっと言葉にしきれないので、また改めてお話できたらと思います。

 

猿之助さんの通人も印象に残っています。私が拝見した日は「これから新橋演舞場『SANEMORI』のチケットを買いに行くところ」という設定で登場されたのですが、SANEMORIのチラシをしっかりとクリアファイルに入れていらした点が妙におもしろかったです。通人は几帳面ですものね。しわしわのチラシは野暮なのでしょう。

 

いやはや、こんなに短期間に何度も何度も助六を拝見する機会というのは、最初で最後なのではないかなあと思います。何より贅沢で、素晴らしい時間でした。

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