歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎座 壽 初春大歌舞伎 第二部「壽恵方曽我」「人間万事金世中」を見てきました!2023年

成人の日の三連休が終わったところですね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

このすえひろはといえば、この三連休に初詣をしてまいりました。おみくじは小吉という結果でしたが、「願望 思いのまゝです」とあり、もはや大吉の気分でした。大吉でも厳しい文言が書かれていることがありますよね。よくわかりませんが、良いことを中心に受けとめ今年も励みます。

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして壽 初春大歌舞伎 第二部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためたいと思います。

   

第二部は、「壽恵方曽我」「人間万事金世中」という狂言立てです。

壽恵方曽我」は、曽我物の新趣向の舞踊作品です。対面を踏襲した華やかなシーンでおめでたさを感じました。今回は五郎を幸四郎さん、十郎を猿之助さん、工藤祐経を白鸚さんがお勤めです。

白鸚さんは体調不良で十一月、十二月と休演なさり、十二月の千穐楽でご復帰なさっていました。私はご復帰後初めて拝見したのですが、大きくお変わりないようすに安堵いたしました。

犬坊丸として染五郎さんもご出演で、高麗屋三代そろい踏みの舞台でした。歌舞伎を見ているとつい当たり前のようになってしまいますが、旅立たれた方々を思いますと、三代揃ってお元気でご活躍というのは大変貴重で喜ばしいことだと改めて思います。どうかご無理なさらず、今後も末永く拝見できますようにと祈っております。

 

人間万事金世中」は、河竹黙阿弥が明治の風俗を描いたいわゆる「散切り物」の作品。イギリスの戯曲「money」を題材としています。強欲な伯父・勢左衛門を彌十郎さん、強欲な妻を扇雀さん、強欲な娘を虎之介さん、彼らに翻弄される恵府林之助を錦之助さんがお勤めでした。

彌十郎さんは昨年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で大活躍で、お目当てにご覧になる方も多いのではないかと思います。いわゆる歌舞伎のイメージとは違った演目ではありますが、彌十郎さんのお芝居の魅力が存分に感じられたのではないでしょうか。

 

もう本当にうんざりするほどに強欲でケチな人々に、子どもの頃に読んだイギリスの短編小説のような展開。随所に皮肉が効いていて、日本式の義理人情とはまた違った西洋の香りがしました。「うんざりするほどに強欲でケチ」というのは彌十郎さんと扇雀さんと虎之介さんそれぞれの喜劇味のうまさが発揮されているからこそですね。とてもおもしろかったです。

なかでも特に印象に残ったのは虎之介さんのお芝居です。ただただまっすぐに金銭欲に走る娘を、嫌味なく良い意味でぽわーんとお勤めになっていて唸らされました。扇雀さんとのやりとりも笑いどころに溢れていましたね。

それにしても「money」というシンプルすぎるタイトルを「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」としたセンスの良さには感服しきりです。字面も語感も最高にカッコよく、黙阿弥のワードセンスにしびれました。

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