今季最強の寒波が近づいているそうですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
我が家には20歳半を過ぎた痩せ型の猫がおりまして、風邪をひいてしまわないか心配しています。どれほどの寒さになるかわかりませんので恐ろしいですね。みなさまも何卒ご自愛ください。
さて、先日のお話ですが、新橋演舞場に出かけまして初春歌舞伎公演 市川團十郎襲名記念プログラム SANEMORIを拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためたいと思います。
この公演については、楽しみにしていらっしゃる方が大勢おいでのことと思います。内容の細部については書かぬよう気を付けますが、ネタバレを避けたい方はどうぞこの先をお読みにならないようお気をつけください。
この先ネタバレ注意
初春歌舞伎公演 市川團十郎襲名記念プログラム SANEMORIは、浄瑠璃の「源平布引滝」を題材とした演目。そのうち歌舞伎の舞台で繰り返し上演されている名場面「義賢最期」「実盛物語」の大筋を辿りながら、木曽義仲と斎藤実盛の絆を浮かびあがらせるような構成でした。
義賢最期・実盛物語の時点では赤子である木曽義仲の成長後の姿を物語の軸として据えることで、現行の上演形態ではわかりにくい源平布引滝の全体像を見せることに成功していて、おもしろく拝見いたしました。
今回は斎藤実盛を團十郎さんが、義賢・義仲の二役をジャニーズ事務所のアイドルグループSnow Manの宮舘涼太さんがお勤めです。そこに児太郎さん、右團次さん、九團次さんといった團十郎さんの公演でお馴染みの方々が、歌舞伎らしい厚みと説得力をもたらしていて、見ごたえがありました。
特に團十郎さんの実盛は数年前に拝見したものよりもぐっと大きく深みを増していたように思います。ぜひ今後も義太夫狂言に取り組まれるお姿を拝見したいです。
何がさて驚いたのは宮舘さんのご活躍ぶりでした。ゲスト的に少しご出演になるものとばかり思っていたのですが、物語の前半の大部分を担われていたのですよね。そのうえ義太夫もありという。このすえひろが拝見したのは初日から間もない頃であったのですが、とてもそうとは思えない堂々たるものでした。
歌舞伎では、お顔が大きく足が短い方が舞台映えして衣装も似合うとされています。スリムで脚長小顔というアイドルの素材はハンデにもなりうると思うのですが、良い意味でそれを全く感じさせない身のこなしでした。
見得の形も肩の高さも美しく、おそらく相当に重心を落として動かれていたものと思います。元々のお顔立ちが歌舞伎の舞台によくお似合いということだけではカバーしきれないものだと思いますから、すさまじい努力が忍ばれます。
宮舘さんといえば、数年前に拝見した滝沢歌舞伎において、鳴物の演奏をお一人で見事にお勤めになっていて、度肝を抜かれたことをよく覚えています。義太夫を聞きながらのお芝居に取り組まれるうちに、体の使い方だけでなく、邦楽の独特の間合いなども会得されるのではないかなという予感がしました。なかなかできないことだと思います。
門外漢のこのすえひろでも年末年始のテレビ番組で宮舘さんのお姿をたくさん拝見しましたから、どれほどお忙しかったことか知れません。朝の番組でも拝見しています。そんななかで、これほどの舞台をお勤めになるとは。
何より、歌舞伎の舞台に真摯に取り組まれていることが客席に伝わってきて、歌舞伎好きの端くれとしても本当にうれしく、胸が熱くなりました。これを機に歌舞伎に興味をお持ちになる方が増え、賑わいに繫がっていきますようにと祈っております。