歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎座 二月大歌舞伎 第三部「通し狂言 霊験亀山鉾」を見てきました!

春とは名ばかりの肌寒さですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。時にあたたかな日もあり驚いてしまいますね。体調を崩しやすくなりますのでご自愛くださいませ。

このすえひろはといえば、この二月はなにやらかにやらで立て込んでいて、毎日が飛ぶように過ぎております。歌舞伎座で仁左衛門さんの一世一代が上演中ということが、常に頭の片隅にあるせいかもしれませんね。

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけ二月大歌舞伎の第三部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

一世一代の霊験亀山鉾

第三部は「通し狂言 霊験亀山鉾」。片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候と銘打たれての上演です。つまりは、仁左衛門さんがこの演目の藤田水右衛門と隠亡の八郎兵衛をお勤めになるのは、これにて最後ということです。寂しいです…

その他の主な配役は芸者おつまに雀右衛門さん、石井源之丞・石井下部袖介の二役に芝翫さん、大岸頼母・掛塚官兵衛の二役に鴈治郎さん、源之丞女房お松に孝太郎さんというものでした。休演されていた千之助さんも無事にご復帰され、大詰では松嶋屋三代が揃うといううれしい趣向であります。役者さんがひとつの舞台に三代揃うというのは改めて思うと本当におめでたいことで、拝見できしあわせです。

 

霊験亀山鉾は、殺人・早桶・サイコパスの三拍子が揃った、鶴屋南北らしい演目です。

私は歌舞伎を主に耳で楽しんでいるようで、南北作品特有のセリフのリズムとの自分の耳との相性があまりよくないのですが、仁左衛門さんと玉三郎さんの南北は大好きです。きっとお二人の巧みなセリフ術のなせる業なのだろうと思います。玉三郎さんのおっしゃる「南北調」というものなのでしょうか。

セリフの良さももちろんですが、なにより南北作品の仁左衛門さんが何の葛藤もなく、心の底からおもしろそうに人を殺めていくようすはたまらないものがありますね。苦しみ悶える人を見てらんらんと光る眼には、言葉で表現しがたいぞくぞくするような魅力を感じます。

 

その方法もいろいろで、美しい所作で刀を振り下ろす藤田水右衛門はもちろん、八郎兵衛のような出刃包丁を使う役どころも大好きです。体中にゴリゴリの和彫りが入ったいかつい男でありながらも、愛嬌がふんだんに盛り込まれているんですよね。

インタビューなどで拝見する仁左衛門さんは穏やかなお話しぶりなのに、どうしてこんなにも殺人鬼やごろつきの役どころがお見事なのだろうと不思議で仕方がありません。これも歌舞伎のおもしろさだなあと思います。

月夜に無残に殺される雀右衛門さんの芸者おつまも、やわらかかつ悲壮で素敵でした。こめかみのあたりまでふんわりと広く桃色を入れた雀右衛門さんのお化粧が色っぽくて好きです。現代人の生活では難しいですがぜひ参考にしたいと思います。この季節の本水はさぞかし寒いことと思われますが、仁左衛門さんも雀右衛門さんもお風邪など召されぬようにと祈っております。

 

この演目は大学生のときに、友人と夜行バスに乗って大阪松竹座まで遠征して拝見した、思い出深いものでもあります。当時は学校が大変遠く、今のような頻度で歌舞伎を見ることはできませんでしたので、結構な冒険でした。いま思えば内容はほぼわかっていなかったのですが、なにやらわからないけれどもとにかくカッコいいなあという思いだけで、最高潮のワクワクを感じていました。このワクワクが今でも続いているのは本当に幸せです。

 

初日近くで足のお加減が心配になる出来事がありハラハラいたしましたが、その後はピンピンされてすっかりお元気なごようすに見え、安堵しております。先日は心配のあまりブログに書いてしまい、ご心配をおかけし申し訳ございません。お元気なごようすですよということを改めてみなさまにお伝えしておきます。

今月は定額制サービスを利用しておりますので、今後も何度も拝見するつもりです。また感想を加えられればと思います。

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