三月もはや月末というところですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
先週のWBCは本当に盛り上がりましたね!優勝おめでとうございます。何かのコンテンツが高視聴率を記録する世の空気感を久しぶりに体験し、このすえひろも大変ワクワクしながら拝見していました。趣味趣向が多様化している時代ですから、このような楽しさを久しぶりに味わったように思います。次回のWBCの際にはもっと楽しめるよう、少しずつ知識を蓄えていきたいです。
さて先日のお話ですが、国立劇場へ出かけまして令和5年3月歌舞伎公演『一條大蔵譚・五條橋』を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。
「曲舞」のおもしろさ
令和5年3月歌舞伎公演は本日で千穐楽とのこと、おめでとうございます!国立劇場へ出かける機会がひとつひとつ減り、さびしく思います。
今回は、鬼一法眼三略巻より「一條大蔵譚・五條橋」の上演。芝居の前に亀蔵さんによる解説があり、本編は又五郎さんの一條大蔵長成、魁春さんの常盤御前、歌昇さんの吉岡鬼次郎・弁慶、種之助さんのお京・義経という配役でした。お馴染みの「檜垣」の場面がなく、珍しい「曲舞」の場面が上演されることでも注目の公演でありました。
「曲舞」の場面は、八剣勘解由と清盛の家臣・播磨大掾広盛が一條大蔵卿の殺害をもくろむ場面。大蔵卿がお馴染みの作り阿呆にて、舞に見せかけ見事にかわしてしまうのが見どころです。上演頻度の低さがもったいないように思え、ぜひ歌舞伎座でも又五郎さんのご出演で拝見したいものだなあと思いました。
又五郎さんの大蔵卿は文楽の人形を見ているような、重力から解放された動きで、大変興味深く拝見いたしました。トコトコとして、志村けんさんのバカ殿様は大蔵卿がモデルというのもなるほどと思うようなチャーミングさでした。それでいて何やら底知れぬものも感じ、おもしろかったです。
「奥殿」の場面も見ごたえのあるもので、又五郎さんの大蔵卿がなんともいえず悲しげで、胸を打たれました。「命長成、気も長成」から「ただ楽しみは狂言舞」までの間のひと呼吸の中に、一瞬ウッと泣きたくなるような悲哀を感じ、チャップリンの反戦映画を見た時のような感覚を得たように思います。又五郎さんの大蔵卿は今まで拝見した大蔵卿のなかでもっともアクティブな大蔵卿でしたので、ふと見える悲しみがより胸に沁み入ったのかもしれません。
最後の「五條橋」も、種之助さんの義経の体のしなやかさに圧倒されました。感動一條大蔵譚の流れで拝見しますと、源氏の旗揚げというムードを感じて、なにやら大変ワクワクいたします。通し狂言で拝見できるのも国立劇場の醍醐味でした。建て替え期間のあいだも、通し狂言を拝見する機会が途絶えませんようにと祈っております。
余談ですが大谷翔平選手のお名前は源義経から取られているそうですね。歌舞伎に出てくる義経には格別の思い入れがありますから、なにやら親近感が湧きます。歌舞伎好きの目から見る義経はどうしても悲劇の人というイメージが先行してしまいますけれども、実際には戦の天才ですから、ぴったりなお名前だなあと思いました。