いよいよ年度末ですけれども、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
このすえひろはといえば、迫るタモリ倶楽部の最終回が寂しく、心密かに名残惜しんでおります。毎週熱心に見ていたというわけでは決してないのですけれども、テレビっ子な自分にとっては学生時代の深夜の友でした。どんなものにも終わりは必ずあるのですね。平家物語の「春の夢のごとし」とは、つくづく美しき表現です。
さて、連日浮世絵のことばかりで恐縮ですが、国立劇場で上演されていた「鬼一法眼三略巻 一條大蔵譚・五條橋」にちなんだ浮世絵をパブリックドメイン作品にて発見いたしました。ちょうど三菱一号館美術館にて「芳幾・芳年ー国芳門下の二大ライバル」展なる展覧会が開催されていますので、ひとつご紹介したいと思います。
鬼一法眼三略巻と月岡芳年の「義経記五条橋之図」
月岡芳年「義経記五条橋之図」ミネアポリス美術館(パブリックドメイン)
こちらはまさしく、義経と弁慶の五條橋での出会いを描いた一枚です。鬼一法眼三略巻五條橋の段でも描かれている大変有名なものですね。鬼一法眼三略巻が通し上演される機会は少ないですが、今月一條大蔵譚と続けて拝見してみると、源氏の旗揚げの気配をより強く感じられてワクワクいたしました。
もとは「義経記」からのエピソードで、簡単にご説明しますとこのようなものです。
力自慢の弁慶は、道行くさむらいから1000本の刀を奪い取ることを目標に、京でゲリラ的武力活動を実施。ついに999本奪ったというところで、五条橋にて笛を奏でる若武者牛若丸(源義経)に出会います。
弁慶は牛若丸に襲い掛かりましたが、牛若丸はひらりひらりと欄干を飛んで攻撃をかわして返り討ち、ついには弁慶を降参させてしまったのです。これをきっかけに、弁慶は義経を生涯の主君としたのでした。
芳年の躍動感ある描写は本当に見事で、感動すら覚えます。どっしりと下重心の弁慶と、無重力の世界にいるかのように軽やかな義経を対角線に配置していて、輪郭線のくっきりとられた一枚絵でありながら、映像を見ているかのようですよね。芳年の筆致は私も大好きで、現代のマンガさながらのおしゃれさであるなあと思います。
ご覧くださいこのポージングの美しさ。指の描写がすこしおどろおどろしくて怖い点も好きです。
特におもしろいのは、弁慶が右足で踏んづけている白い衣が、バサッと翻っている点ではないでしょうか。これにより、弁慶が義経の衣を足で踏みつけながらもひらりとかわされてしまった、まさにその瞬間であることがわかります。たまらないですね。
芳年というとホラーな血みどろ絵が有名だと思いますが、歌舞伎の演目の題材になっている物語や伝説の絵もたくさんあり、どれも美麗でときめきます。
現在三菱一号館美術館にて開催されている「芳幾・芳年ー国芳門下の二大ライバル」展の詳細はこちらです。