歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

広告

歌舞伎座 六月大歌舞伎 昼の部「傾城反魂香」「児雷也」「扇獅子」を見てきました!2023年6月

毎日梅雨どきらしい空模様ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

このすえひろはといえば、今月は松竹歌舞伎会の定額制チケットを購入していたため、空き時間を見つけては歌舞伎座へ出かけて、慌ただしく過ごしております。仁左衛門さんのすし屋が上演されている月に定額制を設定してくださり、ありがたい限りです。

今月から幕見席が再開されたわけですが、定額制チケットは今後も時折販売されるでしょうか…。ぜひまた販売していただきたいものです。

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして六月大歌舞伎の昼の部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

   

昼の部は「傾城反魂香」「児雷也」「扇獅子」という狂言立てです。

傾城反魂香」は、三代猿之助四十八撰の内 と冠しての上演。通常の土佐将監閑居の場に加えて、浮世又平住家の場が上演されました。こちらは私は初めて拝見する場面でした。

今回は中車さんが主役の又平、壱太郎さんが妻のおとくという配役です。当初は中車さんと猿之助さんが夫婦役でご共演の予定でしたが、休演なさっている猿之助さんの代役として壱太郎さんがお勤めになっています。

 

猿之助さんのおとくも記憶に新しく、脳裏に生き生きと思い出されるなか、自分自身集中して楽しめるか心配していたのですが、それは杞憂に終わったようです。中車さんの又平の苦しみと、壱太郎さんのおとくの愛情深さ。お二人の醸すリアリティに引き込まれ、いつの間にか夫婦の行く末を、息を詰めて見守っていました。

義太夫狂言というのは、幼いころから取り組まれてきた役者さんでも本当に難しいものなのだろうなと想像します。元々のお力はもちろんですが、この11年の歳月のなかのお稽古や舞台経験も、とても充実したものであったのではないでしょうか。残念ながら拝見することは叶いませんでしたが、改めて猿之助さんの存在の大きさを感じます。

 

浮世又平住家の場は、大津絵からキャラクターが次々に飛び出してくるという大変おもしろいもので、内心非常に興奮しながら拝見していました。特に新悟さんのなまずが色っぽかったです。

そういえば「浮世風呂」という舞踊にも、色っぽいナメクジが出てきますね。舞踊の世界では、ぬるぬるした生き物は色っぽい存在なのでしょうか。実際のなまずやナメクジに色っぽさを見出すのはかなり難しいと感じますので、発想の飛躍に驚かされます。

 

続く「児雷也」は、ガマ使いの義賊児雷也の名シーンです。今回は芝翫さんの児雷也、孝太郎さんの妖婦越路実は綱手、松緑さんの山賊夜叉五郎という配役です。松江さんが仙素道人をお勤めで、先に拝見していた夜の部・川連法眼の東蔵さんとよく似ていらして驚きました。

大変久しぶりに拝見しましたので、浮世絵や新作歌舞伎NARUTOなどの記憶がごちゃごちゃになっていたようで、あれ、こんな感じで終わるんだったかな?と思いました。児雷也の派生作はあまりにも多いので、混乱しきりです。忍者の魅力は尽きませんね。

 

最後の「扇獅子」は、左團次さんご逝去に伴い上演予定だった「夕顔棚」に代えての上演でした。華やかな若手の女形の方々そろい踏みで、その頂きに君臨する福助さんのお姿を拝見できうれしかったです。

堂々たる見得が素敵で、また懐かしくもありました。本当に楽しみに、心待ちにしていた左團次さんと菊五郎さんの夕顔棚がもう二度と拝見できないことはとにかく残念でつらいのですが、福助さんがこの急遽の舞台にお出ましになったことに心救われました。

Copyright © 2013 SuehiroYoshikawa  All Rights Reserved.