ただいま歌舞伎座で上演中の八月納涼歌舞伎
毎年夏休みのお馴染み、若手花形の方々を中心とした爽やかな公演です。
第一部で上演されている「大江山酒呑童子」は、源頼光の酒呑童子退治を題材とした十七代中村勘三郎ゆかりの舞踊劇です。今回は十七代の孫にあたる勘九郎さんと七之助さんがご出演で、注目を集めているのではないかと思います。
大江山酒吞童子は今回上演の舞踊作品に限らずとても重要な題材ですので、この機会に少しばかりお話したいと思います。芝居見物や配信など、何らかのお役に立てれば嬉しく思います。
「源頼光と妖怪」あるある 全体の流れ
今月上演されている大江山酒吞童子(おおえやましゅてんどうじ)は、昭和38年に歌舞伎座にて十七代目勘三郎によって初演された萩原雪夫作の舞踊作品です。
一条天皇の頃に大江山に出没したという鬼・酒呑童子を題材としており、説話から芝居、浄瑠璃、浮世絵、映画などなど、長らく日本人のあいだで親しまれているお馴染みの物語であります。
内容をごく簡単にご紹介いたしますと、このようなものです。
①源頼光とその従者たちは、大江山に出現する鬼・酒呑童子の退治を命じられ、大江山へと向かう。
②そこにいたのは、かわいらしい童の姿をした酒呑童子。頼光たちが熊野権現から賜ったお酒を勧めると、酒呑童子は喜んでこれを飲む。
③お酒をがぶがぶ飲んだうえ、気持ちよく舞って完全に出来上がり、べろべろに酔いつぶれた酒呑童子。実はお酒には、毒が含まれていたのだった。
④やがて鬼の正体を顕した酒呑童子は、頼光主従に見事成敗される。
とてもシンプルな内容ですね。
源頼光はあらゆるモノノケを退治してきたことで有名なヒーローなので、歌舞伎の舞台にも頼光による妖怪退治の演目が数多くあります。ざっくり分けると頼光の健康度に違いがあり、健康体で元気いっぱいか、病気して具合が悪い、というバリエーションです。いずれにせよ、結果的に見事に成敗するのですが。
加えて、源頼光のそばには強くて個性豊かな4人組の家臣がついていることも特徴です。外国のヒーロー映画さながらですね。
源頼光の妖怪退治系の演目は、大体がこの大江山酒吞童子と同じような構成で上演されています。
①前半(前シテ)で妖怪が世を忍ぶ仮の姿で出現する
②妖怪が一時的に姿を消し、別の登場人物たちの小さなエピソードや踊りなどが披露される
(妖怪の役者さんが、衣装や化粧を変えているのだろうな)
②後半(後シテ)に恐ろしい本性を顕すが、頼光たちが見事に成敗して終わる
という寸法です。
初めて見る演目であっても「源頼光(プラス4人組)VS. 妖怪という題材らしいぞ」とわかれば、詳しいことが不明でも大体理解できるようになっています。ぜひさまざまな演目をご覧になってみてくださいませ。