歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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第39回 俳優祭の思い出① 於:国立劇場大劇場 2023年

このところ急に秋めいて、肌寒い陽気が続きますね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

このすえひろはといえば、ここのところ取り込みが続いており、慌ただしく過ごしております。しかし芝居は変わらず楽しんでおりまして、後々の思い出のためにも、追って感想をしたためておきたいと思います。

 

先日は、国立劇場で開催された第39回俳優祭に出かけてまいりました!コロナ禍を経て7年ぶりの開催とあって、大変な盛況でしたね。

もうすぐ役目を終える国立劇場の空間が、歌舞伎ファンの方々から溢れる熱気で満たされているようす。柱も壁も天井も、歓声や拍手をいっぱいに詰め込んでお別れするのだなあ…と、3階席の最後尾で涙が出そうでした。長年愛された建物の幕切れ間近の姿として、大変胸が熱くなるシーンです。

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第39回俳優祭の思い出① 於:国立劇場大劇場

そもそも俳優祭というのは、歌舞伎・新派の俳優さんによる手作りイベントです。

「資金集め」を目的に俳優協会が主催していて、数年に一度開催されます。俳優さんによる模擬店やお楽しみ演目など、学校の文化祭のような手作りのあたたかみに溢れています。

 

俳優祭は企画から運営までイベンターなどを通さず、すべて俳優さんによる委員会の活動によって開催されているそうです。通常の舞台のお仕事と並行して、いわゆる芸能人の枠からは想像できないようなお仕事もなさっているのですから頭が下がります。

そんな手作りイベントとあって、とにかく「俳優さんが異常に近い」というのが最大の特徴ではないでしょうか。ゆえに会場な大変な興奮に包まれます。このすえひろも汗だくでした。

 

今回の俳優祭は、

一、菅原伝授手習鑑 加茂堤・車引

二、お楽しみ模擬店

三、映像でふりかえる初代国立劇場の思い出

四、戯場八景名残隼(ゆめのくにへようこそありがとうこくりつ)

というプログラムで開催されました。

 

菅原伝授手習鑑は松緑さんによる企画で、研修発表という意味合いの上演です。歌舞伎座の本興行とは違い、これからを担う若手の方々が勢ぞろいしました。こちらが大変見どころにあふれる舞台で、今後の歌舞伎へのワクワク感が感じられる良い時間でした。

 

主な配役は敬称略で下記の通りです。

加茂堤:桜丸 團子、八重 千之助、斎世親王 玉太郎、清行 吉之丞、苅屋姫 莟玉

車引:梅王丸 鷹之資、松王丸 染五郎、桜丸 左近、杉王丸 福太郎、金棒引 市川福之助、時平 松緑

 

俳優祭の一回限りではもったいないなあと思うほどの素晴らしい完成度で、この後につづく模擬店のことなどが頭から抜け、芝居に集中することができました。

特に鷹之資さんの梅王丸がとんでもない良さで、本当に初役なのかと驚くばかりでした。初役と申しますか、なんだかもうこの梅王丸の状態で生まれてきた方なのではないか?と思うほどの馴染み方で、国立劇場大劇場の大きな空間にぴったりとフィットしていました。一日も早く歌舞伎座の舞台で拝見したいですね…!

また、千之助さんの八重や染五郎さんの松王丸のしぐさや声の出し方が、驚くほどそれぞれの親御さんにそっくりで興奮しました。見た目などのDNA的なものを超えて、芝居の中に教えが沁み込んでいるのがわかります。こうして芸が受け継がれていくのですね。国立劇場閉場の寂しさが少しやわらぐ発見でした。

 

長くなりましたので、次回に続きをしたためたいと思います。

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