歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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御園座 片岡仁左衛門 坂東玉三郎 錦秋特別公演に行ってきました!2023年10月

今日の東京は強い雨が降っていましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。寒暖差で体調を崩しやすい季節ですから何卒ご自愛くださいませ。

このすえひろはといえば先日、お友達にお誘いいただいて横浜のKアリーナで歌手のサム・スミスさんの来日公演を拝見してまいりました。鳥肌が立つほどの美声と最高の音響、めくるめく演出、そして何よりご本人の魅力。最初から最後まで本当に素晴らしく、心が浄化されるようでした…。

 

歌舞伎ばかり見ていて外国のエンターテインメントに触れることがあまりないので、始まる前は身構えてドキドキしましたが、洋の東西を問わず美しいものはただ美しく、理屈を超えて感動するものなのだなと思いました。

歌舞伎座でも、外国の方が大変感動なさっているようすをお見掛けすることがあります。説明が必要なのではないかと心配してしまうこともありますが、理屈を超える感動というのは確かに存在するのだなと、今回のコンサートで教えていただいたように思います。

それはそうと、先日名古屋の御園座へ出かけまして、 片岡仁左衛門 坂東玉三郎 錦秋特別公演を拝見してまいりました!備忘録として少しばかり感想をしたためたいと思います。

筋書がすごいです

片岡仁左衛門 坂東玉三郎 錦秋特別公演は、「東海道四谷怪談」「神田祭」の二本立て。四谷怪談でズーンとなった心を、神田祭のラブラブ舞踊でとろけさせてくださるというたまらない狂言立てです。

仁左衛門さんがインタビューで、伊右衛門はお岩さんに惚れて女房にしたけれどもお岩さんからの愛情を感じることができなかった(意訳)、とおっしゃっていたのを読んでから拝見しますと、伊右衛門の仕打ちもただ憎たらしいばかりではなくて、人の世の哀れが感じられました。

玉三郎さんのお岩さんに対して女性の哀れを感じてたまらなくなったことは何度もあり、今回も涙が出るようでしたが、伊右衛門を見て恋や愛の難しさにまで想いを馳せたことは初めてでしたので、芝居の味わいがより深まり、得難い体験でした。

続く神田祭はもう、ただひたすらにラブラブなようすを見せつけられるたまらない時間です。このまま永遠に見ていたい、永遠に見ていられる、という。劇場のそこかしこから声にならない声が上がっていましたし、私も上げていたかもしれません。たまりませんね。

 

そして、筋書の仕上がりが尋常でなかったので、もし今後通販などがありましたら是非にとおすすめしたく思います…!

坂東玉三郎特別公演仕様なのでしょうか、近年の仁左衛門さんと玉三郎さんの共演舞台写真が綺麗に印刷されていて、紙も上質、サイズも大判…という素晴らしい一冊でした!内容もそれぞれのインタビューが写真付きで掲載されていて永久保存版です。

 

そういえば先日、国立劇場の視聴室で孝夫・玉三郎時代、いわゆる孝玉のご共演による「盟三五大切」の映像を拝見してきました。昭和51年(1976)の上演、初代辰之助・源五兵衛、孝夫・三五郎、玉三郎・小万という配役です。

映像がモノクロということもあり、孝玉コンビの麗しさは本当に現実離れしていると申しますか、アニメーションを見ているような感覚に陥りました。見た目に麗しいというだけではなくて、芝居の呼応が当時から素晴らしかったです。お二人が同じ時代に、立役と女形として共演されるめぐり合わせというのは、まさに奇跡ですね。

お二人が現在も揃ってご健在で、孝玉時代に間に合わなかった自分のような者もご共演の舞台を拝見できるというのは、本当にありがたく幸せなことです。もしかしたら歌舞伎以外の世界ではなかなか難しいことなのではないかと思います。今月の御園座にはもう一度参りますので、2023年のいまお二人の姿を拝見できる喜びを改めてかみしめたいと思います。

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