ただいま歌舞伎座で上演中の四月大歌舞伎!
昼の部「伊勢音頭恋寝刃」より、いくつかのお話をいたします。
初めてご覧になった方のお役に立てればうれしく思います
この演目が実際に起こった殺人事件から作られたというのは、先日お話した通りです。
詳しくはこちらをご一読ください…
伊勢の風物
この殺人事件が与えた衝撃の大きさは、
江戸時代の人々にとって伊勢が大変人気の観光地であったことも手伝っています。
一生に一度はお伊勢さん参りに行きたい!とみんなが願うような、憧れの場所であったのだそうですよ
この演目の中にはそんな伊勢の雰囲気を味わえるよう
二見ヶ浦、古市の遊女屋、伊勢音頭と呼ばれる踊りなどなど
伊勢の風物がたくさん盛り込まれています。
さながら、温泉街で繰り広げられる二時間サスペンスドラマのような風情です。
当時の人々はこのお芝居を見て、伊勢まで旅行したような気分になっていたのかもしれませんね!
余談ですが、この物語の主人公・福岡貢は御師という設定です。
御師というのは伊勢神宮の身分の低い神職のことで、
伊勢暦やお札などを参拝者に配ったり、案内などをしていたのだそうですよ。
そういう立場の方も遊女屋に通うというのはなんだか意外でした
涼しさの演出
またこの「伊勢音頭恋寝刃」は、季節が夏に設定されているお芝居であります。
流れる水に赤い盃が浮かんでいる「盃流し」と呼ばれるデザインが
のれんや前掛け、浴衣などに取り入れられていてとても涼しげです。
福岡貢の衣装も白地の絣というすっきりとしたもの。
遊女たちが手にする団扇の表現な涼やかな演出が随所になされ、
視覚的に夏の遊郭の雰囲気が演出されているのですね。
こうして様々な演出に触れてみると、
現代のテレビドラマにも通ずるように思えてきますね!
伊勢の風物を見て旅行気分を味わい、
夏の風情を随所に感じながら最終的にはゾゾッとして帰るという、
楽しげな芝居見物のようすが目に浮かぶようです