ただいま歌舞伎座で上演中の
歌舞伎座百三十年
松本幸四郎改め 二代目 松本白鸚
市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎
松本金太郎改め 八代目 市川染五郎 襲名披露
壽 初春大歌舞伎
二か月続く大変にぎにぎしい襲名披露の興行、
テレビなどでもたくさん紹介され、注目が高まっています!
中でも大きな話題を呼んでいるのが、
新幸四郎さん、新染五郎さんの襲名披露狂言「勧進帳」
数ある歌舞伎演目の中でも屈指の名作であり、
まさしく”歌舞伎を代表する演目”と言っても過言ではないほど有名です。
上演を期に少しばかり、そのあらすじをお話しております。
非常に奥深い演目であるためほんのさわり程度ではありますが、
なんらかのお役に立てればうれしく思います(人'v`*)
ざっくりと流れを把握
④では富樫から安宅の関の通行をゆるしてもらうことができ、
「勧進帳」もお話の大きな山場を越えました。
富樫が退場した後、義経主従一行はやれやれと休息を取ることにします。
ここではツツツン…ツツツン…という三味線の音が聞こえますので、
静かな山奥の雰囲気を感じ取ってみてくださいね(n´v`n)
判官御手を取り給い…
緊張感から解放された義経と四天王たちは、
口々に安宅の関での弁慶の機転を褒めます。
しかし弁慶の胸の内は罪悪感でいっぱいで
敵を欺くためとはいえ、
判官殿になんてことをしてしまったんだろう…
と打ちひしがれ、涙を流して謝るのです。
弁慶といえば「弁慶の泣きどころ」ということばが今も残っているほど
絶対に泣かない強い男だということで有名ですが、
そんな弁慶が一生に一度の涙を流した…という
強く胸を打つ泣き姿であります。゚゚(´□`。)°゚。
そんな弁慶の姿を見た判官殿は、
スッとその美しい手を差し伸べてねぎらうのでした。
神々しいほどのその行いに、弁慶は恐れ入ってひれ伏します。
そして義経主従たちはこれまでのつらい戦いを思い返し
判官殿のおいたわしい身の上を思って悲しむのでした…
人の情けのさかずきを…
さて、ひとまず退散しましょうか…というところへ、
さきほどの富樫たちが再び現れましたΣ('0'o)
とはいってもこれは、無礼へのおわびとお見送りの気持ちからのことで、
スリリングな場面ではありません。
それどころかお酒をがぶがぶと飲んだり
昔の恋の話で盛り上がったりととても楽しそうな場面です。
はははと笑ってしまうようなこともあるかもしれません(´▽`)
万歳ましませ…
おもてなしのお礼にと弁慶は得意な舞を披露。
扇を取って静かに、そして徐々に激しく踊り始めます!
これは延年の舞(えんねんのまい)というもので、
中世のお坊さんたちが法会のあとで行っていたという
延年と呼ばれる芸能イベントの中の舞であります。
もともと弁慶は遊僧といってこうした芸能を披露するお稚児さんだったので、
ダンスはお手の物というわけです。
この延年の舞では長唄もヒートアップし、
詞章のリズムと舞の面白さでトランス的な興奮に包まれます!
そんなどさくさの中で義経と四天王たちは急いで花道を去ってゆくのでした…
いよいよ!飛び六方(法)!
虎の尾を踏み、毒蛇の口から逃れたような、
まさに九死に一生というスリルを味わい…
いよいよ弁慶も大慌てで義経と四天王の元へ向かいます。
花道に出ると幕が引かれて弁慶ただ一人が浮かび上がり、
壮大なクライマックスとなります。
立ち止まった弁慶が感謝の思いを込めて頭を下げますが
これは現代的にオーディエンスに向かってありがとうと言っているのではなく
富樫と神仏に向かって深く感謝をしているわけです。
そして弁慶は、飛ぶような勢いで花道を去ってゆきます!
この引っ込みがとても有名な「飛び六方(六法)」です。
弁慶がうねるような気迫を持って空気を揺すりながら去っていくのを見届けると、
あぁ~!!!歌舞伎見た~ッ!!!!!
という猛烈な満足感でいっぱいになりますね(n´v`n)
長くなってしまいましたが、ようやくこれで勧進帳全体の流れをご紹介できました!
なんらかのヒントとなればとても嬉しく思います。
セリフを追いながら物語を理解していくよりも、
音楽そのものから内容を感じ取るようにしてみると、
より没頭しやすいのではないかなぁと思います!
外国語のミュージカルでも感動できるのと同じかもしれませんね。
まさしく「考えるな感じろ」というような具合でしょうか。
私はロックが好きでしたが勧進帳を音楽として初めて聞いた時
長唄ってなんてカッコいいんだろう!!と仰天し、
以来古典邦楽が大好きになりました。
ぜひ、音楽もお楽しみください(人'v`*)
参考:新版歌舞伎十八番 十二代目市川團十郎著