ただいま歌舞伎座で上演中の
芸術祭十月大歌舞伎!
今月は見どころたっぷりの演目が揃っておりどこからお話すればよいやらというところです。
やはり昼の部「三人吉三」は名作中の名作ですのでこの機会にひとつお話しておきたいと思います。
これまでにこまごまとお話したもののまとめはこちらにございます。
もしよろしければご一読ください!
こいつぁ春から縁起がいいわぇ~でおなじみ
三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)は、
1860年(安政7年)の1月に江戸は市村座にて初演されたお芝居であります。
和尚吉三・お坊吉三・お嬢吉三という三人の吉三郎が
とある因縁あって出会うことから付けられた題名で、
「三人吉三(さんにんきちさ)」という通称で知られております。
江戸の市井の人々の暮らしの中にあるドラマを描いた
世話物というジャンルを代表する演目のひとつです。
歌舞伎をご覧になったことのない方にもおそらく有名なせりふ
「こいつぁ春から縁起がいいわえ~!」は、まさにこの三人吉三の名ゼリフです。
新年会などでお酒が入ると朗々とこのセリフを披露するおじさまなどが
身近な方の中にみえたという方も少なからずおいでではないでしょうか。
このセリフがこうして大変有名になっているわけというのは、
芝居の作者の見事な七五調の小気味よいセリフ術が
長きにわたり大変愛されてきたからであります。
その作者こそ、当時二代目河竹新七、後に大作者・河竹黙阿弥となる人物です。
この演目は当初「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」という外題で上演されましたが、
なぜだかその時はなかなか評判にはならなかったのだそうです。
しかしながら、これはいける、素晴らしい芝居だ!絶対に!と確信していた新七は、
30年後外題を「三人吉三巴白浪」と変え、内容も一部変えて再演。
するとたちまち猛烈な人気狂言となり、今に至る…というわけです!
黙阿弥が初演時にふてくされてしまっていたら今この楽しみはなかったんだと思うと、
感謝の念がふつふつと湧いてきます!!