ただいま歌舞伎座で上演中の
芸術祭十月大歌舞伎!
夜の部「助六曲輪初花桜」は仁左衛門さんが江戸一の色男・助六さんをお勤めになっていますね。
勘三郎さんの追善興行ということで勘九郎さん・七之助さんの御兄弟と玉三郎さんまでご登場という、
大変ぜいたくで貴重な機会として話題を呼んでおります。
この機会に少しばかりお話いたしますので、なんらかのお役に立てればうれしく思います。
白酒売り新兵衛 実は…
江戸一番のイケメンとして吉原中でも大評判の助六さんは実は、
父の敵を討たんとしている曽我五郎時致(そがのごろうときむね)であり、
源氏の宝刀・友切丸を探し出したいがために、いろいろな人に喧嘩をふっかけては
刀を抜かせようとしている…という事情があります。
そんな荒くれ者の五郎なのですが、対照的に大変ソフトなタイプのお兄さんがいます。
それが曽我十郎佑成(そがじゅうろうすけなり)で、
助六のお芝居では白酒売新兵衛(しろざけうりしんべえ)として登場します。
「白酒売」いう仕事は江戸の春の風物詩であり、
おひなさまが近づく2月の終わりごろから3月の半ばまで、
「山川の白酒」という甘いお酒を売り歩いていました。
他の演目にもしばしば登場しますので、春らしい雰囲気を感じ取ってみてくださいね。
十郎というのは基本的に荒ぶる五郎を心配してたしなめるキャラクターですので、
助六においても最初はあまり喧嘩しては良くないよとたしなめるのですが、
五郎の真意を知るや否や、自分も一緒に喧嘩をしようなどと言い出すというのが笑えるところです。
ご長男がおとなしく真面目でご次男が自由奔放、というのは結構よくあるお話だと思いますので、
江戸時代もそうだったのかなあと思うとなんだかおもしろいですね(´▽`)
余談ですがこの白酒売新兵衛を最初にお勤めになったのは
あの江島生島事件で知られる生島新五郎だということです。(註:外題は違います)
濡れ事の名手で女性から大変人気があったという美貌の生島新五郎は、
助六というよりも白酒売のタイプであったようであります。
参考文献:歌舞伎登場人物事典