歴史を重ね磨き抜かれた歌舞伎の舞台の上には、
洗練されたデザインが溢れていますよね!
今月も上演されている、平家物語の悲劇にに取材した名作
「熊谷陣屋」にちなんだお話をひとつしたいと思います。
芝居見物の楽しみのなんらかのお役に立てれば幸いです。
「八」と思いきや、くちばしと目
熊谷陣屋の幕が開きますとパッと目に飛び込んでくるのが、
大道具のそこかしこにあしらわれた漢字の「八」のような紋。
事情があり、恥ずかしながらこのすえひろがフリーハンドで描いてみたものですけれど、
イメージしていただけますでしょうか。
よくよく見てみますと、これは鳩が二羽向かい合っているデザイン。
「向かい鳩」という家紋なのであります。
この紋は熊谷次郎直実が源頼朝から授かった紋とされ、
以来「鳩」は熊谷氏の代表的な紋として使われてきました。
現代的な感覚で鳩というと、
オリンピックなどでわっと空に放たれるような平和の象徴、
非常にピースフルな存在ですけれども、
当時は軍神・八幡大菩薩の使いと考えられていたそうで、
血気盛んな武将たちがたいへんありがたがる鳥でありました。
そんな信仰にちなんで二羽の鳩を「八」の字によせているという説があります。
これについては諸説ありますので、一説とお考えいただければと思います。
私は何かと「8」に縁があり、
それゆえにわざわざ末廣を名としておりますので
この紋を見ますとなにやらうれしくなってしまいます。
またおもしろい話としては、
熊谷次郎直実の子孫が京都で薬屋さんを開いて東京へ進出したそうで。
現在、銀座の一等地で文房具や香などを販売している
「鳩居堂」がまさしくそれだそうであります!
鳩居堂といえば歌舞伎座からもほど近いお店ですから、
近く熊谷陣屋の思い出を胸に立ち寄ってみようと思います。
参考文献:日本の家紋続/今日から役に立つ! 常識の「社会科力」
今月の幕見席