新型コロナの外出自粛期間に始めた「Googleストリートビューで芝居の舞台となった場所とその周辺を訪ねてみる」という遊び。本日もひとつ訪ねてみようと思います。ゆるゆるとした旅ですがみなさまもぜひご一緒にいかがでしょうか。
今日はなにやら海が見たい気分でありますので、海辺を舞台とする芝居ゆかりの地をうろうろしてみたいと思います。 事情があり画像そのものを貼ることができず地図埋め込みとなりますが、何卒ご了承くださいませ。
前回:神霊矢口渡 編
平家女護島 俊寛とは
「俊寛」は、平家物語に登場する俊寛僧都のエピソードをもとに創作された近松門左衛門の浄瑠璃。
島流しにされた俊寛たちのもとにある日待ちわびた赦免の知らせが届き、同じく流人の身の仲間たちは都に帰ることになった。ところが赦免状には、なぜか自分の名前だけがない…というところから始まる人間ドラマです。このまま孤島に一人ぼっち…という絶望感は、いつの時代のどんな国の人の胸にも迫るものがあります。
これを書いていて、気持ちを晴れ晴れとさせたいから海を見たいと思ったのにものすごく重いセレクトをしてしまったな…と少しばかり後悔しておりますが、構わず参りましょう。
さっそく行ってみましょう
俊寛僧都が流されたとされる「鬼界ヶ島」、現在の鹿児島県の硫黄島(いおうじま)はこの島のようです。先の大戦で最激戦が繰り広げられたあの硫黄島とは違った島であります。
この硫黄島は中世、極南の流刑地として使われたところで、大海原に囲まれたありさまはまさしく「絶海の孤島」といった雰囲気です…
飛行機もない時代、多くの人々が「これはもう戻れない」という絶望感を抱いたはずの土地にGoogleストリートビューでササッと向かうのは少し気が引けるのですが、船も飛行機も大の苦手な私は文明の利器に頼ろうとする甘え心が捨てられません。平にご容赦願いたく存じます。
まずは港へ行ってみましょう。
えっ、この海の色はなんでしょうか…?
ほど近くの海辺を見ても、先ほどと色が違うようです…!
気になって調べましたところ温泉と硫黄が混ざってこのような色になるのだそうです。
俊寛も気持ちよく温泉に入ったでしょうか…そう想像しますと少し心穏やかになります。。
まさしく俊寛ゆかりの地、俊寛の庵があったという「俊寛堂」がこの奥にあるようですが、残念ながらここまでしか入れませんでしたので下記の観光サイトで外観を見て見ましょう。
芝居を見すぎていて海ギリギリに住んでいるイメージでしたが、意外と海辺から離れた場所に暮らしていたのですね。
俊寛も見たかもしれない、庵近くから見た山の風景です。
なんでもこの島には義経千本桜渡海屋大物浦に登場する安徳天皇が落ち延びたとされ、そのお墓もあるそうです。平家とゆかりが深いのですね。
史実はいざ知らず、義経が連れてきたのだろうか…?と思ってしまうのが性であります。
庵から北東へまっすぐ伸びている道を進み、横に曲がってみますと見事な海原が。
ここはまさに俊寛の大道具を思わせる風景ではありませんか?
南の港へと戻ってまいりました。
つくづく不思議な色ですね!温泉ということで、少し温かかったりするのでしょうか。
こんなに特徴的な色ですと伝説化して義太夫の詞章にも読み込まれていそうなものですが寡聞にして存じません。
港の近くにもうひとつ見るべき俊寛ゆかりのものがあるようですので行ってみましょう。
あの像です!
残念ながら正面からのストリートビューがないのですが…
まるで遠ざかる船を追いかけているように、俊寛が海に向かって手を伸ばしているようすです。 銅像になって毎日海を眺めているのかと思いますと、たまらない気持ちになります。
数々の芝居を思い出し泣きそうですので、絶景を見て帰りましょう。
この島はとにかく藪の背が高いなあと感じます!ざわざわと鳴りそうですね。
俊寛も夜などはさぞかし恐ろしかったことでしょう…
よし!たどり着きました!
マーブルの海を臨む見事な絶景ですね!
俊寛はあまりにも悲しい物語ですが、この美しい景色がせめてもの救いと思いたいです。
この地まで出かけるのはなかなか難しいことですので、Googleストリートビューで少しでも雰囲気を知ることができたのはうれしい限りであります!